コラム - 組織のルール

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組織のルール

悲しすぎる・・・トヨタ販社の車検不正問題

トヨタ自動車の系列販売店などで
車検の不正が行われていたことが発覚。

9月末までに、販売会社15社(16店)で6,659台の
不正が明らかになっています。

新聞記事によると、

排ガスの成分や速度計などで
必要な検査をしていなかった、

ヘッドライト光度の検査結果を
改ざんしたりしていた

等の不正があったようです。

これは、私にとって非常に悲しいニュースなのです。

本当に心から悲しい・・・。


なぜなら、中部品質管理協会が主催する
トヨタ流の仕事の進め方や業務プロセスの改善の仕方、
トヨタ流のマネジメントの仕方などを
お伝えする講師の立場ですから。

※中部品質管理協会→https://www.cjqca.com/


トヨタ販社のこの不正の背景には、何があったか?

これまた新聞記事によると、
販売店同士の車検台数の奪い合いが激化していたようです。

トヨタ本社が開催する販売店を集めた会議でも、
車検台数や売上などで優秀な販売店を
表彰する制度もあったとのこと。

このことが現場に過度な負担を強いて、
その結果が不正につながった・・・

今まで私が講師を務めたトヨタの仕事の進め方の研修を
受講いただいた方から、こんなツッコミを受けそうです。


『宇井さん、トヨタはどんな業務をするときでも、
お客様視点での目的から考えるんですね?

誰に、どうなってももらうためにこの業務をするのか、って。

で、そのお客様視点の目的から目標を設定する。

目標だけを単独で存在させないのが、
トヨタの仕事の進め方なんじゃないですか?

目的とつながらない目標は“ノルマ”になる、
って言ってましたよね?

ノルマではない車検台数の目標で、
なんでこんな不正がトヨタの販社で
発生するんですか?

今回の車検の不正は、
お客様視点の目的が明確になっておらず、

車検台数や販売台数のノルマだけがあって、
それが現場で過度な業務をさせていたんじゃないですか?

結局トヨタでもそのあたり浸透していないってことですか?』

って。


辛すぎます・・・


このツッコミの内容について、
少し解説をさせてください。

トヨタの仕事の進め方としては、
まず、こう考えます。

「この業務のお客様は誰か?」
「そのお客様にどうなってもらうために行うのか?」

業務の「目的」から考えるのです。

その目的は、常にお客様視点での目的が求められます。


例えば、総務部のような部署であれば、
どのような業務かはさておき、

「この業務のお客様は、自社の社員さんたち」
「社員さんに仕事に安心して取り組んでもらうために行う」

というようになるでしょう。

で、次に考えるのが、この目的がどれぐらいの
レベルで達成できたらいいのかの「目標」を
考えるのです。

「社員さんに安心して仕事に取り組んでもらう、
と言っても、安心度合にはレベルがある。

何をもって安心して働けていると評価するか?
例えば“ハラスメントの件数”とか・・・
ハラスメントの件数であれば、●●件の減少を目指す」

というように。

つまりは、「目標」は単に達成すべき数値ではなく、
「目的の実現レベルを測るもの」なのです。

総務の例でいえば、
「目的:安心して働ける職場を社員に提供する。
 目標:ハラスメントの発生件数を●件以下にする。
 (ハラスメント発生件数=安心して働ける職場かどうかの評価指標)」
となります。

この話をするときに、よく言うのは、
「お客様視点の目的から導かれない目標は
単なる“ノルマ”になります」
ということ。

今回の車検不正問題でいえば、どうでしょう?

車検を業務として行う目的は何か?

「他の販売店よりも売上を上げるため」
「販売店会議で表彰を受けるため」
でしょうか?

これは完全にお客様視点ではなく、
「自社(自分)視点」の目的。

お客様視点での目的であれば、当然ながら
「お客様に安心していただくため。
お客様に安全を守るため」でしょう。

このお客様視点での目的から目標を考えたらどうなるか?

「車検台数を●●台の達成を目指す」
「来年は全国でベスト3に入り、販売店会議で表彰される」
にはならないでしょう。

これが現場に落とされたら、現場にとっては、
“達成しなかったら上司から怒られるノルマ”に
なってしまうのです。

実際、現場ではそんな意識になっていたから不正まで
してしまったのではないか思います。

もしも、目標がせめて、
「自店が担当した車検後の車両トラブル0件」
になっていたら・・・

これだけで不正が防げたとは思いませんが、
車検後トラブル0件を表彰の対象にしていたら、
少しは意識も変わっていたかと思います。

人間は性善説でも性悪説でもありません。

評価される通りに動くのです。


車検台数で評価されるのであれば、
そのための行動を取りますし、

トラブル件数で評価されるのであれば、
そのように動きます。

トヨタが発表した不正の原因としては
以下の5つが挙げられています。


(1)サービス現場における過大な業務量とエンジニアの人員不足、
(2)車検制度への役割認識と順法意識の不足、
(3)経営層・管理者と現場作業者の風通しの悪さ、
(4)指定整備における監査機能の不備、
(5)車検を正しく行うための顧客への確認や説明の不足

私は、これに、
「顧客視点のない目的による目標の設定」
を付け加えておきたいと思います。

追伸
もしも、販売台数や車検台数を目標にするのであれば、
各店の店長さんは、車検に携わるスタッフや営業担当に
こう指導しなければいけません。

「うちは、車検台数○○台を目標にしているけど、
この車検台数とは、何を測る指標か分かってる?

決して、うちがどれだけ儲かっているかを測る指標じゃないよ。
ましてや、表彰にどれだけ近づけているかの指標でもない。

どれだけ多くのお客様に安心をお届けできているか?
どれだけ多くの安全な車を増やせているか?

それを測る指標だからね」

と。


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