コラム - 経営のルール

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経営のルール

稲盛和夫氏曰く「利益とは・・・」

8月24日、京セラ創業者の稲盛和夫さんが

亡くなられました。



享年90歳。



稲盛和夫さんは、言わずと知れた、

京セラ創業者であり、

KDDIの母体になったDDIの創設者であり、

経営破綻したJALを再建された経営者。





私、盛和塾に参加していたわけでもありませんし、

稲盛さんに心酔していたわけでもありません。



ですので、稲盛さんについて

とやかく言える立場にはないとは思います。



ですが、今回は、稲盛さんを題材として

メルマガを書かせていただくことを

お許し願いたいと思います。



9月6日の日本経済新聞14面に、

日本航空(JAL)現会長の植木義晴氏の

インタビュー記事がありました。



植木義晴氏は、2010年にJALが経営破綻した際、

稲盛さんのもとでJALの執行役員運航本部長、

取締役社長を務めた方です。



インタビューの内容は、もちろん、

稲盛さんに関わること。



その中にこんな内容がありました。



インタビュアー:稲盛氏が指揮する再建とは何でしたか?

植木義晴氏:利益を出すことを実践を通じて

                     徹底的に叩き込まれた。



      社員と語り合うコンパと呼ばれる議論の際に

      稲盛氏と同じ席になり、安全に関する議論をした。



      私は、『我々は公共交通を担っている。

      一番大切なのは安全。利益を出すのは難しい』

                    と言った。



      稲盛氏は『安全にお金はかからないのか。

      そのお金は誰が払っているんだ』

                     と私に問いかけた。



      私は言葉が出なかった。

      『お金は他人が払うんじゃない。

                     自分が生み出す利益から生み出すんだ』

                     これが稲盛氏の答えだった。

(以上)



企業においては、とにかく

「利益を出せ」と言われます。



目標も、「営業利益○○円」などと明確に示されます。



しかし、経営者や管理者が、社員や部下に対して、



「なぜ、会社は利益を出す必要があるのか」

「なぜ、これだけの額の利益を出さなければいけないのか」



をしっかりと伝えている企業は

それほど多くないのではないでしょうか?



社員も、会社なんだから利益を出すのが当たり前、

利益が出てなかったら仕事する意味がない、と

利益を出す意味を考えずに、単に言われた利益目標を

盲目的に追い求めていることが多いのではないでしょうか?



稲盛さんは、「利益を出せ」という前に、

「利益を出さなければいけない理由」を

ちゃんと教育されていたのでしょう。





会社が利益を出す目的は何か?



それは、

『今よりも、もっとお客様を喜ばせるため』



であり、



『今よりも、もっと良い世界を創るため』



だと私、宇井は考えています。



例えば、製造業であれば、

お客様にもっと高い品質の製品をお届けして、

お客様にもっと喜んでもらいたい、

もっとみんなが住みよい社会を作りたい。



しかし、そのためには、

最新式の加工機や測定装置など機械が必要だし、

その機械を動かす人材が必要。



それらを手に入れるためにはお金がいる。



もちろん、研究開発費も必要だし、

電気代も水道代も掛かる・・・、



広告宣伝費も掛かる・・・



だから利益を出さなければいけないわけです。





JALでいえば、お客様により安全で、

より安心して飛行機に搭乗していただきたい。



そのためには、エンジニアの教育も必要だし、

こんな設備や道具も必要。

他にも安全のためには○○も××も△△も□□も必要。

だから、利益を出さなければいけない、

ということですね。



必要な資金は金融機関から借りればいい、

ってことかもしれませんが、

利益が出ていなければ金融機関も

お金を貸してくれません。





こう考えると、経営者にしろ、管理職にしろ、

社員や部下にはこう伝えるべきなんだと思います。



「うちの会社として、今は、お客様に

これだけの高いレベル価値を提供しきれていない。

でも、〇年後には、こんな高い価値を提供して、

お客様に今以上に喜んでいただきたい。



そのためには、○○や××が必要だったり、

△△や□□を行う必要もある。



それを実現するためには、

○○円の利益が必要。



だから目標として掲げた

営業利益額○○円を達成しよう!」





利益を得て、やりたいこと、実現したいことを

明確に伝える必要があるのです。





会社は、決して経営者の私利私欲を満たすために、

利益を出すのではありません。





稲盛さんは、DDIを立ち上げる際、

「動機善なりや、私心なかりしか」

と唱えていたとのことです。



私心(私利私欲)のために利益を出せ、って

経営者が言ったときから、

恐らくその企業の腐敗は始まります。



稲盛さんのような生き方をするのは、

なかなか容易ではないと思います。



が、稲盛さんがおっしゃっていた

「怠け心があって、気楽に行きたい人は

経営者になってはいかん」

の言葉を胸に刻んでおきたいと思っています。





最後にひとつ、

稲盛さんの著書「生き方」に書いてあった、

天国と地獄の違いについて転載したいと思います。



『あるお寺で若い修行増が老師に



「あの世には地獄と極楽があるそうですが、

地獄とはどんなところなのですか」



と尋ねました。



すると老師は次のように答えます。



「たしかにあの世には地獄もあれば、極楽もある。

しかし、両者には想像しているほどの違いがあるわけではなく、

外見上はまったく同じような場所だ。



ただ、一つ違っているのは、そこにいる人たちの心なのだ」



老師が語るには、地獄と極楽には

同じように大きな釜があり、そこには同じように

おいしそうなうどんがぐつぐつと煮えている。



ところが、そのうどんを食べるのが一苦労で、

長さが一メートルほどの長い箸を使うしかないのです。



地獄に住んでいる人はみな、われ先にうどんを食べようと、

争って箸を釜につっ込んでうどんをつかもうとしますが、

あまりに箸が長く、うまく口まで運べません。



しまいには他人がつかんだうどんを無理やり

奪おうと争い、ケンカになって、うどんは飛び散り、

だれ一人として目の前のうどんを口にすることができない。



おいしそうなうどんを目の前にしながら、

だれもが飢えてやせ衰えている。

それが地獄の光景だというのです。



それに対して、極楽では、同じ条件でも

まったく違う光景が繰り広げられています。



だれもが自分の長い箸でうどんをつかむと、

釜の向こう側にいる人の口へと運び、

「あなたからお先にどうぞ」と食べさせてあげる。



そうやってうどんを食べた人も、

「ありがとう。次はあなたの番です」と、

お返しにうどんを取ってあげます。



ですから極楽では全員がおだやかにうどんを

食べることができ、満ち足りた心になれる』



稲盛 和夫. 生き方 (pp.133-134). サンマーク出版.より


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