コラム - 経営者へのラブレター

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経営者へのラブレター

目標の功罪

「肩こりは幽霊のせい・・・」



医療情報まとめサイト「WELQ」に
記載された記事の一部に
こんな内容がありました。

このWELQを運営していたのがDeNAの
キュレーション(まとめサイト)事業部門。


WELQだけでなく、DeNAが運営する
他のまとめサイトにおいても、

不特定多数のライターによって
書かれた記事内容が、法令に抵触したり、
他の記事をコピー&ペーストしただけの
ものだったり、信憑性に問題があるということで
昨年末、世の中を騒がせました。


それらサイトは、現在、無期限休止に
追い込まれています。


今週の月曜日3月13日、このDeNAの不祥事を
監視する第三者委員会の報告書が公表されました。


「実際にどれだけの数の不正があったのか?」

「なぜ、このような不正が起こったのか?」

「なぜ、防ぐことはできなかったのか?」
等々。


これらの項目がまとめられていたのですが、
経営者にとっても、管理者にとっても
今回の不祥事の原因は、なかなか示唆に富む
ものではないかと思います。


ということで、今回のメルマガでは、
このDeNAの不祥事の報告書を取り上げてみます。


報告書のなかで、やっぱり一番気になるのは、

「なぜ、このような不祥事が発生して
しまったのか」という原因に関してですね。


原因について報告書の内容を
まとめると大きくは次の3つになると思います。


①リスクに対する想定の甘さ

②経営層と社員とのコミュニケーション不足

③目標数値達成への過度なこだわり


①も②も気になるところではありますが、
今回は、③に焦点を絞って
お伝えしたいと思います。


第三者委員会の報告書が公表された翌日の
日経新聞には、以下のことが書かれていました。


(以下、日経新聞記事より)

DeNAの守安功社長がキュレーション事業の
利益目標などを事業責任者らとの
相談もないままに設定。

その結果、現場では高水準の目標達成に向け、
検索エンジンの上位を狙うSEO対策に
突き進んだり、記事の質よりも量を
重視したりする過程を明らかにした。

(以上)

要約すれば、経営トップが無理な目標を掲げ、
現場にその達成を強いるがために、
現場は目標達成こそが目的化して、
やってはいけないことをしてでも目標を
達成しようとしてしまった、

ということですね。


これ、東芝の問題と同じ構図。



経営者や部門の管理者としては、
すごく悩ましいところだと思います。

目標達成への意識が低い経営者や管理者は、
正直、目標達成できません。


目標達成には、何としても達成するという
意識が不可欠。


しかし、その意識が強すぎて、
それを社員や部下に強いると、
現場が疲弊して、不正につながる恐れがある。


経営者、管理者としては、
どうしたらいいんでしょうか?


その答えを考える前に、
目標を追い求めるうえでの難しさに
ついて私の体験を一つご紹介させてください。

一昨年、「毎月100km走る」という
目標を年初の1月に立てました。

ちなみに、ジョギングは10数年来行っていて、
それ以前にも100㎞走る月がありました。

が、100㎞走る月があったりなかったり
だったんで、とにかくこれからは
コンスタントに毎月100㎞走ることを
目標にしたわけです。

3ヶ月継続して目標達成した後の4ヶ月目、
ひざに痛みを感じました。

そこで、もし、「毎月100km」という目標を
立てていなかったら、
「足、痛いから休憩」って言って、
しばらく走らずに休んでいたと思います。

それまでも、ちょっと違和感があれば、
休んでましたから。


が、毎月100㎞走るという目標が
あったばっかりに、無理に走り続けたんです。

「ひざ、痛てなぁ」と思いながら・・・。

で、どうなったか・・・


案の定、本格的にひざを痛めてしまい、
それから10カ月ほど、思うように
走ることができませんでした。

何のために、走っているか?

「健康に生活するため」なわけです。

が、目標達成を意識しすぎたばっかりに、
逆に健康を害したと・・・。

本末転倒ですよね。


ただ、じゃあ、目標なんて立てない方が
いいのか、と言えば、そうでもないはずです。

やっぱり目標はないより、
あったほうが力を出せますし、
チーム内で目標が共有されれば、
チームワークの高さにもつながります。


繰り返しになりますが、
目標達成への意識が低いリーダーの
チームはなかなか目標を達成することが
できません。

目標を達成する意識は高く持たなければ、
ならない。

しかし、弊害もある。

組織のリーダーとして、
どうしたらいいのか?


現時点で、私が考えていることの中から
2点、お伝えしたいと思います。


①『目標を立てるとともに、
 なぜ、その目標を達成する必要があるのか、
 目的を明確化する(共有する)。』


 注意しなければいけないのは、
 その目的の中に、
 「顧客や社会への良いインパクト(影響)」
 が表現されているかどうかです。

 例えば、DeNAのキュレーション事業でいえば、
 利益目標を立てて、なぜ、その利益目標を
 達成するのか・・・


 その目的として、
 「自社の収益力を高めるため」とか
 「自社の新たな事業の柱を確立させるため」とか
 ではNGです。

 自社の視点しかなく、
 「顧客・社会への良いインパクト(影響)」が
 表現されていませんから。


 顧客や社会へのインパクトを表現するとしたら、

「質の高い医療情報へのアクセスを容易に
 することで、読者の健康に対する意識を高め、
 安心して生活できる支援をするために」
 くらいになるでしょうか。

 この視点が入っていない目的は、
 目標設定の「罪」を抑える機能を果たしません。



②『頑張りで目標を達成するのではなく、
 仕組みで目標達成できるようにする。』


 「とにかく目標必達だ」って
 組織のリーダーが発破をかけているだけで、
 メンバーが頑張って、
 目標が達成できるのであれば、
 そんな楽な話はありません。

 そうではなく、目標が達成できるだけの
 仕組みを構築するのです。

 ある意味、これはリーダーの大きな
 役割の一つです。

 メンバーの頑張りだけで、
 目標を達成しようとしない。

 もちろん、頑張りは大事ですが、
 その目標が達成できるだけの仕組みを
 構築するのです。

 DeNAの場合、仕組みは構築していたと
 いうかもしれません。

 しかし、新聞にはこう書いてありました。

 「記事作成に関するマニュアルそのものに
 薬機法(=旧薬事法)に関する誤りがあり、
 それを参考に作成された記事に影響が出た。」と。


 仕組みが間違っていたということです。

 仕組みを構築したつもりでも、
 期待する成果、目的を実現できる成果が
 出ないのであれば、即その仕組みを見直すこと、
 これが大切です。


ちなみに、こうしたDeNAや東芝の不祥事を目にし、
経営者の中には、
「自社は大丈夫か?同じような問題が
発生する芽はないか?
あるとしたら、どんなことか?」と
内省できる経営者と

「ふ~ん、DeNA、とんでもねぇな」と
あくまでも第三者的観点でしか見られない
経営者に分かれるのだろうと思います。

えっ、私?

気をつけます・・・。


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