コラム - 人材育成のルール

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人材育成のルール

『二流の戦略と一流の実行力』の言葉に潜む罠

以下、2014年8月28日の「カンブリア宮殿」に出演していた

ダイキン工業会長井上礼之氏の言葉。


「当社の場合は、『一流の戦略と二流の実行力』と

『一流の実行力と二流の戦略』だったら、

『一流の実行力と二流の戦略』を重んじるということでやってます」


言わんとするところ、よくわかります。

現代のような経済環境の変化が激しい時代においては、

戦略に時間をかけていたら、他社に遅れを取ってしまう恐れ大ですからね。


しかし、この言葉、気を付けなければいけないと思うんです。

特に中小企業の社長さんで、あんまり論理的な思考が得意でない人とか

経済環境などをあんまり分析するのが好きじゃない人にとっては、

この井上会長の言葉、自分の都合のいいように解釈してしまいかねないです。


「おぉ!いいこと言うねぇ。そうなんだよ、戦略なんて小難しいこと

言ってるんじゃなくって、行動すりゃあいいんだよ。

とにかく、行動、実行!それに尽きるわな」ってな感じで。


そして、社員に言うわけです。「とにかく動け!」って。


井上会長の言っているのは、戦略を立てなくたっていい、

戦略をないがしろにしたっていいってことでは、決してないはずです。

戦略は二流なんであって、ないわけでもないですし、

また三流でもないんですよね。


それと、これが大事なんですが、一流の実行力を発揮するための人材育成を

ものすごく力を入れて行っているということです。

ただ単に、行動が大事だから、とにかく動けって言っているだけではないんです。

動ける人材を、それこそ戦略的に育成する仕組みを構築しているんです。



例えば、毎年、ダイキン工業主催の盆踊り大会が開催されるとのことですが、

その盆踊りの運営は若手社員(3~4年目)が行うとのこと。

地域住民など2万人以上が来場する盆踊り大会の運営を通して、

仕事の進め方を学んでいく機会を与えているのです。

これ、相当に勉強になると思います。

「どうしたら昨年の反省を活かせるか?」

「どうしたら来場者にもっと喜んでもらえるか?」

「どうしたらダイキンの良さを地域の人たちにもっと分かってもらえるか?」

「どうしたらもっと効率的に運営していけるか?」

めちゃくちゃ考えるでしょうし、チームで仕事を進めるコツも早い段階で

学んでいけると思います。

ちなみに、実行委員のメンバーは通常の仕事を大幅に免除されるとのことです。

それと、こうした人材育成の仕組みもさることながら、

一流の実行力を育んでいるのは、

「社員を信じて、どんどん仕事を任せる」という風土にあるのでしょう。

そして、その風土は、井上会長の考え方の賜物だろうと思います。

以下、井上会長が話されていたいくつかのことをそのまま掲載します。

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「どんなにいい戦略でも、まあ実行するのは人ですから、

その人の可能性を信じて思い切って難しい仕事にチャンスを与えるっちゅう、

大化けするのが人やと思いますね。

モノや金はそんなに化けないですよね。

人っちゅうのはとんでもない力を発揮する可能性がある」


「『本当にできない、私にはムリだ』という閉塞感に満ちている人が、

『やったらできるじゃないか』となったときに、

本当に輝くように表情が変わり、

本人の将来に『希望』とか『夢』を持って『情熱』を持って、

仕事をすることにつながっていくような気がしますね。

『人を育てる』とか『活かす』っていうのは『管理』では人は育たない。

やはりそこには性善説であり、人の可能性を心から信じるか、

その実例があるかどうか。

人っちゅうのはね、信じられたらあんまり裏切れないものですよね」

(以上)

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そして、その考えの根底には、社員への愛があるのだろうと思います。


以下、井上会長の言葉です。

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「『この職場で働き続けたい』と思うというような職場環境を

いかに作っていくかがね、経営者の重要な役割ですよね」


「選んでくれた人達(=ダイキンに入社した人達)一人一人に

できるだけ対応したい。

大組織だからなかなか難しいですけどね。

対応するようにということを心がけてたらね、

人っちゅうのはね「大化け」しますよ、とんでもなく。

それとね、なんか恋人ができたとかね、悩んだらね、

あれだけ能力のある人が、全然仕事が進まんときあるんですよ。

そのときにどれだけ待ってやれるかというね、

こういうのが一人一人への対応で、そういうことにこだわってますね」


「だんだん地位が上がるにつれてこちらの発言よりも下の人の発言を多くして、

こちらの言うことは少なくなりましたね。

だから稲穂が実れば実るほど、

トップは頭を下げて謙虚さが必要だというのと同じように、

上にいくほど聞く側にまわった方が、

コミュニケーションうまくいくんじゃないですかね。

聞くの好きですね。「人が好き」やと思います。

私は人と対話してるのはいつまでもあきない」

(以上)
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繰り返します、「二流の戦略と一流の実行力」と言っているってことは、

その一流の実行力を生み出すための仕組みの構築に

心血注いでいることです。

人材育成を本当に大事にする考えがあるってことです。

それを省いて、「実行力だ!」って言っているようでは、

二流の実行力しか生み出せないでしょう。


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