弱いチームの口癖・・・与田監督、それを言ってはいけません!
プロ野球、2年ぶりの交流戦が開幕しました。
観客数の制限もありますし、
広島カープは選手がコロナ感染で
試合が延期になっているし、
まだまだ本来の姿ではありませんが、
少しずつでもこうして“通常”が戻ってくるのは、
嬉しいことです。
しかしながら、私が応援している中日は、
今年も・・・
ひたすら弱い・・・
本当に弱い・・・
同じプロ野球チームなのに、
なんでこんなに差があるんだってぐらい弱い・・・
5月27日時点でセ・リーグ4位、
勝率 4割5分 借金4。
(と、交流戦前に書いていたら、
なんとあのソフトバンク相手に2勝1分けと
思いも寄らぬ結果になっています)
ただ、今の中日ドラゴンズというチームは、
私にとっては非常にありがたい存在なのです。
なぜなら、今のドラゴンズは、
「組織論」、「マネジメント論」、
「リーダーシップ論」等
恰好の研究対象になるからです。
『ダメな組織のリーダーって、本当にこうだよな』とか、
『弱いチームって、本当にこうだよな』
と実にいろいろなネタを提供してくれてます。
“偉そうに”って思われるかもしれませんが、
いや、ホント、マジで分かりやすいんです。
マネジメントの研修や会議活性化の研修等で
私が『こういうことをしてはいけませんよ』と
受講者にお伝えしていることを
色々やってくれてます。
今日は、その中から一つ、
『弱いチームのリーダーやメンバーが
ついつい言ってしまうこと』を
お話をしたいと思います。
で、すぐにドラゴンズの話に入るかと思いきや、
その前に、一つこんな事例を紹介させてください。
とある企業の営業部門での会議。
テーマは、営業なので、
「どうしたら売上を上げられるか?」
でした。
私は議事進行役ではなく、
同席している立場でした。
議事進行役が、メンバーに投げかけました。
『どうしたら売上を上げていけるか、
今日は色々アイデアを出し合っていきましょう』
すると若手(20代後半)の営業マンが
こう発言をしたのです。
『我々営業として、売上上げていこうとしたら、
客先への訪問件数を増やすしかないですよ!』
かなりキツい断定的な口調でした。
で、その発言を聞いていた私は
心の中で思うわけです。
『随分、強く言ってるけど、全然考えてないなぁ』って。
なぜなら、売上を上げる方法が、
「訪問件数を増やすしかない」
なんてことあり得ません。
これは私の考えですが、
だいたいの場合、「~しかない」と
言っている人はあまり考えていないと言ってもいいです。
こんなこともできるかもしれない、
あんなこともできるかもしれない、
といろいろな方向で考えるだけ考えたうえで、
「う~ん、商談件数増やすしかないか」
という「~しかない」であれば考えているなぁ
ということにはなります。
しかし、はなから「商談件数増やすしかない」
なんて決めつけて発言しているのは、
深く考えていない証拠です。
もちろん、会議ですから、
「お前、考えてないなぁ~」
なんてことを言ってはいけないですよ。
議事進行役としては、
「なるほど、○○さんは、売上を上げるには、
商談件数を増やしていこう、ということですね」
と受け入れなければいけません。
ということで、「~しかない」という発言には、
気をつけないといけないのです。
これを先の営業マンのように強い口調で行ってしまうと、
他のアイデアが出にくくなります。
これでは、組織力を活かせません。
またそもそもリーダーが言ってしまったら、
メンバーは他のアイデアを言いたくても、
言えなくなりますよね。
しかも、方策がそれしかない、なんて
リーダーに言われたら、
方策が限定されてしまって息苦しいです。
打ち手は無限にあるはずです。
それを限定してしまう「しかない」には、
リーダーは特に注意しなければなりません。
で、中日ドラゴンズの与田監督・・・
4月6日ヤクルト戦3-4で負けた後のコメント
「チャンスであと1本出なかった。
今日のゲームは何とか取りたかったが…。
切り替えてやるしかない」
5月13日の阪神戦1-2で敗戦後のコメント
「やっぱりチャンスで1本が出ないというね。
これはもう、何とか打てるように頑張るしかない。
口でいうのは簡単だけど、結局、そういう得点能力が低いので、
チャンスタイムに打てるようにするしかない」
「警戒して走られた。そこは走られないようにするしかない」
5月15日のヤクルト戦0-5で
3安打完封負けを喫したときのコメント
「反省して、向かっていくしかない」
「いい投手にどうやってアプローチしていくか、
力を付けるしかない」
心から思います。
「与田監督、考えてないよね!」って。
組織のリーダーとなる人は、
本当に心理学とか問題解決手法とか
ちゃんと学んだ方がいいです。
対策案を考えるときに、
「多面的に考える」のは問題解決の
基本中の基本です。
「いい投手にどうやってアプローチしていくか、
力をつけるしかない」
ではなく、
「いい投手にどうアプローチしていくか?」
「力をつける」・・・他には?
と考えるのが多面的です。
「しかない」というのは多面的思考を
放棄することになります。
それと今ない力をつける、というのは、
ないものねだりです。
現有の資源で、どう勝っていくかを
考えるのが戦略・戦術です。
それと、原因を追究するときは、
多面的に考えるのと併せて、
“深堀”をしなければなりません。
「勝てないのはなぜか、打てないから」
と言って、即解決策を考えるようではNGです。
トヨタの5つのなぜのように、
なぜ、打てないのか、○○だから、
なぜ、○○なのか、××だから、
なぜ、××なのか、
と真因を探って、その真因から解決策を
導き出していかなければなりません。
問題解決の基本中の基本なのです。
弱い組織は、解決策を狭い視野でしか
考えません。
その証拠は「~しかない」に表れます。
リーダーは自分自身が言っていないか、
気をつけなければなりません。
またメンバーにも言わせないように
しなければなりません。