強い企業の共通点は・・・
消せる筆記具、FLIXION(フリクション)。
随分とここ数年で市場に浸透してきました。
http://www.pilot.co.jp/frixion/info/#/home/
私も愛用者の一人ですが、
このペン、売上の7割は海外で上げているとのことです。
特に大ヒットしているのがフランス。
確かに、私が海外(英国)で仕事していたときも、
現地の人たちって、鉛筆を使わずに、
万年筆やボールペンを使うんですよね。
で、間違えると、いちいち修正液を使って消して、
その上に書く、と言う、何という面倒なことをするんだと、
すごく違和感を覚えていました。
今日のブログでは、その消える筆記具FLIXIONを開発した
PILOTの会議体についてお伝えしたいと思います。
2月14日のカンブリア宮殿に
パイロットコーポレーション 代表取締役社長の
渡辺 広基(わたなべ・ひろもと)氏が出演していました。
その中で、紹介されていたのが、
「技術プレゼンテーション」と呼ばれる会議体。
どんな会議かと言うと、
製品の開発スタッフが、自ら開発してきたものを
社長へ直接プレゼンテーションし、
そのうえで社長が「商品化するか、否か」を意思決定する場なのです。
PILOTにおける商品化の最終意思決定機関ってわけですね。
これは、現社長の渡辺社長になってから始められたそうです。
開発スタッフにとっては自分が開発してきたテーマが
商品化できるかどうかの最終関門なわけです。
番組を見る限り、一度で商品化のゴーサインが出るというのではなく、
何度も何度もプレゼンをしてようやくゴーサインが出るという感じでした。
ポイントは、この会議の目的。
なぜ、渡辺社長は、この「技術プレゼンテーション」なる場を作ったのか。
それは、
『物事を早く決めて、商品開発のスピードを上げること』
に他なりません。
渡辺社長曰く
「物事を決定して商品化するまでのスピードが非常に速くなった。
スピードがいま、一番必要なことです。
それから、あの場面(技術プレゼンテーションの場)と言うのは、
私だけではなく、あらゆる部門の責任者が出ております。
例えば、企画、デザイン、製造、それから販売、販促ですね。
そう言った責任者がいますので、
商品の押し出し方をどうしようとか、これ販促ですけどね、
製造にかかった時、どういう製造ラインを組めばいいのかとか、
全部共有できて早いんですね」。
とのことでした。
このPILOTの「技術プレゼンテーション」と全く同じ会議体を持つのが、
生活用品の製造卸、アイリスオーヤマ。
どちらが先に始めたのかは、分かりません。
アイリスオーヤマの場合は、「プレゼン会議」と呼んでいます。
(別名、「新商品開発会議」ともいうそうです)
毎週月曜日午前10時から午後6時近くまで、
丸一日を使って、「プレゼン会議」が開催されています。
PILOTと同様、社員が次々に大山社長の前で、
開発案件についてプレゼンテーションをしていきます。
時間は、1案件5~10分。
大山社長の他、営業担当の大山専務、製造担当の大山常務、
財務担当の大山取締役(って、全部大山やん!大山4兄弟なんですね)が
出席し、その後ろには、設計デザインや製造、特許など
各部門のマネージャーも参加しています。
そのプレゼンを聞いた、大山社長等が担当社員に
どんどん質問を投げかけていくわけです。
「この部分はどうやって薄くしたんや?」
「特許は取れへんのか?」
「コストダウンできる余地は残ってんのやろな?」
社員がそれに答え、大山社長が納得すれば、
その場で決裁が下りると。
なお、商品の開発に関することだけなく、
売り場デザインや販促キャンペーン、
重要な得意先への納入価格の決定なども
「プレゼン会議」で大山社長が決裁するそうです。
PILOTもアイリスオーヤマも同じことをやっているわけですが、
共通していることは意思決定を速くして、
仕事の進むスピードを上げているということ。
社員にとっても、何がよくて、何がよくないのか、
自分はどうすればいいのか、が明確に分かるわけで、
非常に安心感を持って、
仕事を進められる環境が提供されているといえるでしょう。
経営者のマネジメントにしろ、
管理者による職場のマネジメントにしろ、
社員/部下が自信を持って、安心して、仕事が進めやすい環境を作る、
と言うことが本質的なところだと考えています。
その点で言えば、PILOTの「技術プレゼンテーション」も
アイリスオーヤマの「プレゼン会議」も、
スピードを実現するのがメインの目的ではありますが、
マネジメントの観点からも、
実に理にかなった手法だと思います。
もちろん、社長の感性が市場の感性と合わなくなったらどうするんだ、とか
社長に何かあったら途端に会社が立ちいかなくなるんじゃないか、
と言うデメリットも考えられるとは思います。
が、それを差し引いても
(というか、両社ともちゃんとそれをカバーする策
は打たれているとは思いますが)
スピードと社員の仕事を進めやすい環境を実現する上で、
非常に有効な手法と言えるでしょう。
※参考文献「日経トップリーダー2012年12月号」日経BP社