目的と手段を間違えない!
私が若かりし頃、
今から30年近く前、
まだ20代だった頃の話です。
当時、製造業での営業をしていました。
地元愛知県のトヨタ自動車さんは
お客様の一つだったのですが、
購買部門の方から言われことが、
今でも非常に心に残っています。
「宇井さん、仕事において大事なのは、
目的と手段を間違えないことだよ
手段を目的化してはいけない」
その時は、「はぁ」と
分かったような分からないよな生返事しか
できなかったのですが、
今、こうしてコンサルタントとして
仕事をさせていただいていて、
その言葉の意味するところの奥深さを
ものすごく感じているところです。
「仕事において目的と手段を間違えてはいけない」
「手段を目的化してはいけない」
本当に大事なことです。
昨年、弊社のクライアントさん(製造業)で、
こんな事例がありました。
設計部門の課長さんで、
以下のようなお話をされた方がいらっしゃいます。
『うちの課の問題は、○○のスキルを持った
設計者が足りてないことです。
現在、そのスキルを持った人は2人しかない。
本当は5人揃えたい。
うちのあるべき姿は○○のスキルを持った
設計者を5人揃えることですね。
中途採用するか他部署から異動させるか、
いかに5人揃えるかを考えていきたいです』
これ、一見なにも問題ない発言ではあります。
が、目的と手段を間違えないという観点からすると、
「ちょっと待った」となるのです。
そのお話を伺ったときにの、
その課長さんと私の会話・・・
宇井:「なるほど、○○のスキルを持った設計者を5人揃える。
そのためにどうするかを考えたいということですね」
課長:「はい、そうです」
宇井:「ところで、5人揃えて、課として出したい
成果があると思うんですけど、
5人揃えてどんな成果を出したいのですか?
何のために5人揃えたいのですか?」
課長:「う~ん、それで言ったら、設計のスピードを
上げたいんですよ。
いま、そのスピードが遅いって、部長からも
他部署からもせっつかれてるし・・・」
宇井:「なるほど、設計スピードを上げたい・・・
ちなみに、今その設計スピードって、
だいたいでいいんですけど、
どれぐらいのイメージですか?」
課長:「ざっくりでいうと、
1件当たり3か月かかってますね」
宇井:「1件当たり3か月。
それをどれぐらいにできたら他部署も
喜んでくれそうです?」
課長:「1ヶ月でできたらいいですね」
宇井:「なるほど、なるほど、1ヶ月ですね」
ということで、
この課長さん、
目的と手段を間違えていたのが、
お分かりいただけましたでしょうか?
課長さんの頭の中では、
「目的=○○のスキルを持った設計者を5人揃える」
になっています。
しかし、お話を伺ったところ、
これは目的ではなく手段。
目的は、
「設計スピードを上げること
(=他部署の期待・要望に応えること)」
です。
そして、その目的をどのレベルで実現したいかが
あるべき姿としての「1案件当り1ヶ月」となります。
もしも、「5人揃える」を目的にしたら、
どうしたら「5人揃えるか(手段)」を
考えることになります。
中途で採用する・・・
新卒で採用して教育する・・・
他部署から引っ張ってくる・・・
等々
「設計スピードを上げる」を目的にすれば、
「5人揃える」は手段ですから、
ひょっとするとそれ以外にも手段が
あるかもしれないと考えられるようになります。
もしも課長が以下のような提言を
部長や経営層にしたらどうでしょう?
「設計スピードを上げるために
○○のスキルを持った設計者を5人揃えたい。
1案件当り1ヶ月でできるようにするには、
設計者が5人は必要だと考えています」
恐らく、こういわれるでしょう。
「その設計スピードを、
現有の2人で実現することを考えなさい。
それを考えるのが課長の役割です!」
と。
目的と手段を間違えると、
上司との認識も一致しなくなります。
いかに目的と手段を間違えないようにするか、
これが仕事においては本当に大事なこと。
で、どうしたら間違えないようにできるかが、
問題になるわけですが、
ポイントは、
・目的は結果系、手段は行動系
で捉えることです。
上記の課長の例でいえば、
「5人揃える」は行動系です。
「設計スピードを高める」は結果系。
です。
ここで、一つ疑問が湧いてくる方が
いるかもしれません。
設計スピードを高める目的が更に
その先にあるのではないか?
その通りです。
あります。
例えば、設計スピードを上げて、
出したい成果は、「顧客満足度の向上」
かもしれません。
さらに言えば、
「顧客満足度の向上」の目的は
「売上高の向上」
かもしれません。
目的は、いくらでも上に上がっていけます。
では、どこまでを自分の業務の目的に
設定するかと言えば、
自分の業務だけが責任の及ぶ範疇で
考えればいいでしょう。
つまり、顧客満足度の向上まで上げてしまうと、
設計スピード以外にも必要なことが出てきてしまいます。
ましてや売上向上は設計スピードのアップ
だけでは何ともならないことです。
ということで、私が20代の頃に聞いた、
「宇井さん、目的と手段を間違えてはいけないよ」
の一言の重み、深みをつくづく感じる
今日この頃なのです。
それをお伝えしたくって、
今回のメルマガを書きました。