成果を出し続ける組織の口癖
いろいろな組織、いろいろな管理者の方を見ていて、
思うことがあります。
ズバリ言ってしまうと、成果を出せていない経営者や管理者の方って、
話が抽象的なんです。具体的じゃない。
部下に話をするときも、「人間力を高めよう」とか、
「組織の和で成果を出していこう」とか。
確かにその通りなんですが、
具体的に「人間力」ってなんなの、
「組織の和」を築くにはどうしたらいいの、ってことが
ないままに話が進んでしまうんです。
部下も部下で、「具体的に人間力って、どんな力なんでしょう?」とかって
話が出るかというと、まず出ることはありません。
また上司が部下から報告や提案を受けるときも、
部下からの話を具体的にせずに、ある意味自分の勝手な想いで、
話を進めてしまったりします。
例えば、部下が、「お客さんへの訪問をもっと効率化していきたい」という
提案があったとします。
それに対して、
「効率化するだけじゃなく、もっと人間関係を
しっかりと築くことも考えて訪問してくれ」と
即座にコメントしてしまったり。
部下が言っている「効率化」の意味を具体化する前に、
いろいろ意見を言ってしまったりするんですね。
やっぱり、こう質問を投げかけてほしんです。
「具体的に、○○さんがいう“効率のいい顧客訪問”って
具体的にどういうこと?」と。
ちなみに、かの甲州の戦国大名、武田信玄には、こんな逸話が残っています。
以下、司馬遼太郎の「夏草の賦(なつくさのふ」からの引用です。
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織田信長のまだわかいころ、甲斐の武田信玄ははやくも
信長おそるべき存在であることに気付き、
尾張からきた僧を歓待してそのうわさをきいた。
信玄は、信長の能力(当時はまだ尾張でもさほどに買われてはいなかったが)
だけでなく、その性格、性癖まで知ろうとした。
たとえば信長は独創的な鷹狩り(たかがり)をするときき、
そのやりかたをくわしく知ろうとした。
―唄は、どういううたを好む。
―左様、かような。
と、僧は、信長が愛唱する幸若舞(こうわかまい)の敦盛(あつもり)の
一節である例の「人間五十年、化天のうちをくらぶれば」の
うたを紹介すると、信玄はそのふしまで知りたがった。
―どういうふしか、唄うてみよ。
―いいえ、拙者はうたは不調法でござりますれば、
ご容赦ねがわしゅうござります。
といっても、信玄はきかない。
やむなく僧はそのうたをうたった。
信玄は目をつぶってそれを聴き入った。
信玄は、信長が好む鷹狩りの法によって信長の発想法を知ろうとし、
その愛唱歌によって、性格の底にあるものを懸命に汲もうとしたのであろう。
(以上)
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戦国時代、情報網が発達していたわけではないので、
情報源と言えば、旅の雲水(うんすい)や山伏、高野聖(こうやひじり)
など宗教的理由による旅行者だったんですね。
武田信玄が「情報(インテリジェンス)」の大切さを
知っていたということもポイントですが、
そうした情報源から、とにかく具体的に、具体的に話を聞き、
その具体的な情報から判断しようとしたということは、
大いに参考になるのではないでしょうか?
「具体的にいうと、それってどういうこと?」
「具体的にいつのこと? 具体的にだれ? どこ?」
「具体的にどんな理由で? 具体的にどんな方法で?」
などなど。
ぜひ、「具体的には?」ってのを口癖にしてみてください!
きっと何かが変わってくるはずです。