数字を見たら比較と分解
たとえば、以下の“数字”を見て
どのような“好奇心”が湧いてくるでしょう?
(それぞれの数字につながりはありません。
別々で考えてみてください)
・2020年の新車販売台数 465万6632台
・2020年の合計特殊出生率 1.34
※合計特殊出生率:一人の女性が生涯に出産する子どもの数
・日本の2022年度の防衛費(予算) 5.4兆円
※12月16日付の新聞記事から
いかがでしょう?
仕事において伝えたいことを伝えるとき、
数字を有効に使えるのは、
ビジネススキルとして重要なポイントです。
少なくとも仕事上で、
「売上がかなり落ちてますね」とか
「クレームはだいぶ減ってきてます」とか、
「納期通りに納められない製品が結構あります」とか・・・
こんなアバウトな表現を使っているようでは、
なかなか“デキる”ビジネスマンとしては
評価してもらいにくいでしょう。
お互いの認識を合わせるためには、
数字を使うことが必須。
「かなり」「だいぶ」「結構」という表現は
人によって捉えるイメージが違いますから。
ですから、部下育成・人材育成において
「数字」をいかに使わせるようにするかは、
有効な手段だと思うのです。
ただ、数字を使うときにはポイントがあります。
「数字は単独で使わない」です。
数字は単独では意味がありません。
たとえば、「私、体重78㎏です」と言っても
意味はありません。
数字は他の数字と比較して初めて意味が出てきます。
「去年の今頃体重85㎏でした」と言われたら、
「かなり痩せましたね」となり、
「78㎏」に意味が出てきます。
「去年の今頃体重72㎏でした」と言われたら、
同じ「78㎏」でも、その意味は違ってきます。
こうして他の数字と比較をすることで数字に意味が出る。
比較すべき対象は以下の4つです。
①過去との比較
②未来(目標)との比較
③標準との比較
④他者(企業であれば競合企業)との比較
どんな状況でもこの4つが当てはまるわけではありませんが、
数字を見たら「比較」する、
これを念頭に置いておけるといいと思います。
冒頭に掲げた「2020年の合計特殊出生率 1.34」
であれば、
①過去との比較:
「前年は何人だったんだろう?」
「10年前は何人だったんだろう?」
②未来(目標)との比較:
「日本が目標にしている合計特殊出生率があるとしたら何人?」
③標準との比較:
「先進国の平均値と比べたら多いの少ないの?」
④他者との比較
「アメリカは何人?フランスは?中国は?」
という感じでしょう。
これを考えることで、「1.34」に意味が
付け加えられるわけです。
ちなみに、それぞれの数字は、
①過去との比較:
2020年:1.34
2019年:1.36
2010年:1.39
厚生労働省 Webページより
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-01-07.html
②未来(目標)との比較:
希望出生率:1.8
日本経済新聞Webページより
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFE022EW0S1A001C2000000/
人口を維持するためには2.1が必要。
③標準との比較
世界の合計特殊出生率は、
2000~05年平均では2.65。
先進地域では1.56、発展途上地域では2.90。
国連の推計によれば、
2045~50年平均では世界全体では2.05、
うち先進地域では1.84、発展途上地域では2.07。
④他国との比較
2019年実績
日本 :1.36
アメリカ:1.71
フランス:1.84
中国 :1.70
ドイツ :1.54
内閣府資料より
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/gian_hokoku/20210611shoshikagaiyo.pdf/$File/20210611shoshikagaiyo.pdf
数字を見たら、こうした比較の発想をすることで、
ビジネスセンスの向上にもつながると考えています。
それと、もう一つ。
「数字を見たら分解」です。
この分解が「数字に対する好奇心」
にもつながると思います。
さらに言うと
「問題解決力アップ」「発想力アップ」
にもつながります。
分解は、以下の4つの視点です。
①いつ(When)
②どこ(Where)
③だれ(Who)
④なに(What)
たとえば、冒頭の数字
「2020年の新車販売台数 465万6632台」
であれば、次のようになります。
①When
「月別でいえば、何月が一番売れて、何月が少ないんだろう?」
②Where
「都道府県別でいったら、
どこが一番売れていて、どこが少ないんだろう?」
「地域別でいったら、どこの地域で多く売れていて、
どこの地域は少ないのだろう?」
③Who
「年代別でいったら、どの層が一番買っているんだろう?」
「どの自動車メーカーの新車が一番売れて、
少なかったのはどの自動車メーカーだろう?」
④What
「どのクラスの新車が一番売れたんだろう?」
「どの車種が一番売れたんだろう?」
組み合わせもありです。
Who×What
「どの年代で、どの車種が売れているんだろう?」
Where×What
「どの地域で、どのグレードの車種がお遅れているのだろう?」
等々
もっと他に考えられる「○○別新車販売台数」は
あるでしょう。
そして、これらのことを考えたら、
どうしても考えたくなるのが、
「Why(なぜ?)」
なわけです。
「なぜ、この地域では、この車種が売れていて、
この地域では少ないのだろう?」
「なぜ、30代の層にこの車種が多く売れているのだろう?」
というように。
数字を使って仕事ができるようにするために、
まずは数字に関心を持つ。
そのためには、
「数字を見たら比較と分解」です。
数字は、単独では意味がありません。
比較と分解をして、初めて意味が付け加えられるのです。
管理職の立場であれば、
人材育成の一環として、
仕事で数字を使うときには、
比較と分解をして考える、
そんな教育もしていただけるといいと思います。
あなたの会社の前年度売上高を
比較・分解するとしたら?
追伸:
12月15日、国土交通省が
毎月の「建設工事受注動態統計」で
2013年からデータを二重計上していたことが
分かったそうです。
国が発行している数字です。
元々の数字が間違っていては、
どうしようもないです・・・
しかし、これちゃんと比較と分解をしていたら、
もっと早く二重計上に気付けたのかもしれません。