日本人上司が外国人部下から最も嫌われる一言
先日(9月7日)、以前勤めていた会社でのお付き合い以来(12年前)、
懇意にしていただいている方々と食事をする機会がありました。
同僚ということではなく、とあるプロジェクトで一緒になった、
それぞれ違う会社の方々です。
その当時、課長さん、部長さんだった方々が、
いまでは、副社長、専務、海外現地法人の社長などと、
本当に会社の中枢を担うポジションで活躍されています。
日本でも名だたる企業の方々で、
その会社で働いている社員さんに、
今度、「○○さんと飲むよ」なんて話をしたら、
「普通には話が出来ない人です!」と驚かれたことがあります。
こうしたご縁をいただけたこと、本当に感謝しています。
で、その海外現地法人の社長の方から、
その時に伺ったお話をひとつご紹介したいと思います。
日本人駐在員が、海外のスタッフとのやり取りにおいて、
陥るひとつの悪いパターンがあるそうです。
現地スタッフが、会議の場などで、自分の意見を伝えます。
すると現地の日本人駐在員は、
まずは、現地スタッフの意見を組んでやらなければ、
との思いや、まずは部下の話を聞けという教育を受けていることから、
現地スタッフの意見を素直に受け止めるそうです。
しかし、どうしても、その後、自分の意見を言おうとすると、
「however(しかしながら)」という接続詞を使ってしまう。
つまり、せっかく受け止めた現地スタッフの意見を、
howeverと言って、否定して、自論を展開してしまう、
ということが非常に多いらしいのです。
現地のスタッフにしてみれば、
「日本人のBOSSは、自分の意見を聞いてくれたんだ」、
と安心していたら、あっさり「however」と否定されてしまって、
余計にがっかりしてしまうわけですね。
これが、何度も続くと、「またかぁ」となり、
挙句の果てには、日本人駐在員の話は、
はなから聞かないようになってしまう、とのことでした。
コミュニケーションのスキルを少し勉強したりすると、
よく言われることで、「Yes,but方式」なんてのがあります。
「Yes」と言って、まずは受け止め、そのうえで自論を述べろと。
(butとhoweverは、同じぐらいの意味だと思ってください。)
でも、これ外国人に通じないんですね。
というか、外国人だけでなく日本人に対しても、
通じないと思うんですよね。
Yesと言って受け入れたとしても、
結局はbutで相手の意見を否定しているわけですから。
Yes, but方式では、うまくいきません。
では、相手の意見と違う意見を述べようとしたら、
どうしたらいいのでしょう?
「Yes,but」ではなく、「Yes,and」にするんです。
例えば、以下の文章を読んでみてください。
部下「改善活動は、やっぱり改善チームのリーダーに
リーダーシップがないとうまくいかないと思います。
現場改善は、リーダーが引っ張るしかないですよ」
上司「なるほど、○○さんとしては、
もっと現場改善は、リーダーが引っ張っていくべきだと
考えているということだね。(Yesと受け止めて)
しかし(butでつないで、自分の意見を言う)、
リーダーが引っ張るのではなく、
メンバーがやらされ感を持たずに、
自発的に改善に取り組んでいけるようにすることが、
現場改善には必要だと思うんだが、どうだろう?」。
これは、「Yes,but方式」ですね。
日本人駐在員が陥るパターンです。
では、「しかし」のところを、「and(そういうことで言えば)」に
変えてみたらいかがでしょう?
上司「なるほど、○○さんとしては、
もっと現場改善は、リーダーが引っ張っていくべきだと
考えているということだね。(Yesと受け止めて)
そういうことで言えば、(andでつないで、自分の意見を言う)、
リーダーが引っ張るのと併せて、
メンバーがやらされ感を持たずに、
自発的に改善に取り組んでいけるようにすることも、
現場改善には必要だよね」。
全く同じことを言っていても、
受ける印象は随分違うのではないでしょうか?
「Yes,but方式」は、
「あなたの意見はAだ。しかし、私の意見はB。
AかBかで言えば、Bが正しい」という伝え方になると思います。
「Yes,and方式」は、
「あなたの意見はAだ。それプラス私の意見のBもあってもいい。
AかBかではなく、Aの要素とBの要素を併せたよりよい方法があり得る」
という伝え方になります。
無理やりにでも、部下との会話においては、
「なるほどこういうことね。そういうことで言えば」
と、「and(そういうことで言えば)」を接続詞に使ってみる。
するといままでと違ったコミュニケーションが、
部下と取れるようになるはずです。
もちろん、ビジネス上のことですから、
部下の意見をどうしても受け入れられないケースもあるでしょう。
そのときは、そのときでまた違ったコミュニケーションの取り方を
すればいいんです。
それについては、いつかまたお話をしたいと思います。
まずは、先日の現地法人の社長の話に触発されましたので、
「Yes,and方式」を意識するといいです、
ということをお伝えいたします。