簡単に言えば言うほど・・・
昨日のブログ記事「有能なリーダーとは・・・」の最後で、
落合元中日ドラゴンズ監督が著書「采配」の中で、
シンプルに伝えることから生じる弊害があると語っていたとお伝えしました。
プロ野球の監督とコンサルタント。
職種は違いますが、同じ指導・育成をする立場の人間として、
ものすごく共感できることです。
シンプルに伝えれば、伝えるほど生じる弊害とは・・・
以下「采配」から引用します。
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現役引退後は難し打撃技術をシンプルに伝える方法を考えてきた。
小学生でも理解でき、納得してもらえる表現、言葉遣い、伝達方法などである。
ところが、ここにひとつの弊害が生まれた。
シンプルに伝えようとすると、相手の耳に入りにくいということだ。
私に打撃指導を受けようとする選手は、
自分の知らないことを教えてくれるだろうと期待している。
しかし、私がシンプルな表現を使うと
「この人は、誰でも知っているような簡単なことしか言わないな」と感じるようだ。
「バッティングは、そうやってシンプルに考えていくものなのか
「何事もシンプルに考えていくことが大切なんだな」
そう受け取ってもらえれば、その先の話もしていくことができる。
だが、実際にはそうはいかない。
「こんなことしか教えないなんて、どうせ俺にはできないと思っているんだろう」
そんなふうに受け取られ、「それくらい、俺だったわかっているよ」と耳では聞いていても
頭には入らなくなってしまう。
中略
自分の専門分野、すなわちプロ野球選手にとっての野球に関しては、
シンプルに説明してくれる人よりも、難しい言い回しを使う人のほうが
高度な内容を伝えてくれていると感じるようだ。
中略
シンプルな表現は、受け手に勘違いさせる場合が少なく、
大切な要素を凝縮しているものなのだ。
高い技術を持っている人ほど、その難しさを熟知しているからこそ、
第三者に伝える際にはシンプルな表現を使おうとする。
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昨日お伝えした元ソニー社長の出井氏の「有能なリーダーとは?」に対する答えも
実にシンプルです。
「チームを作り、PDCAを回して成果を出し続ける人」ですからね。
私も、極力研修においても、コンサルティングの場でも、
簡単に伝えようと意識しています。
(正直なところ、簡単に伝えようと意識しているというよりは、
自分が理解できるレベルで伝えようとすると、
簡単にしか伝えられないってのが、本音だったします。)
が、そこに落合元監督が感じている弊害が本当にあるんです。
なんかものすごく画期的で、高度な話が聞けると思っている人や、
少しかじったことにあることに関しては、すぐに「こんなこと知ってる」という人、
そういう人たちがいるんです。
高度な話を簡単に伝えているつもりではあるのですが、
どうもそのあたりが理解してもらえなかったりもします。
で、じゃあ、その人たちが「知っている」ということが出来ているのかというと、
どうも出来ている感じではないんです。
落合元監督も本の中で言っています。
『私がいくら「ここが一番大切なんだ」と説いても伝わらない。
そして、私が伝えようとした基本的なことを、その選手ができているのかと
観察してみると、まったくできていないというケースが少なくない』。
私も、他の人の話を聞くときには、「基本的なことで分かっている」、
で済ませてしまうことのないよう、気をつけて聞くようにしたいと思う。