良妻の条件
本日は、とある企業で将来管理者になった時に困らないように、
ということでの「コーチング研修」を行ってきました。
役職上は、まだ管理職ではありませんが、やはり管理職になってから、
マネジメントのなんたるかや、部下とのコミュニケーションを学ぶより、
事前に学習させるというのはいいやり方だと思います。
で、それにちなんで、コーチング的ネタを一つ。
司馬遼太郎の小説「功名が辻」の第1巻にこんな一節が出てきます。
主人公の山内一豊がその嫁、千代と婚儀を挙げ、
初めて夫婦になった後のシーン。
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「あの、一豊様」
と、千代は生涯そう呼んだ呼び方で、伊右衛門に呼びかけた。
「男として、ご自分のご生涯を、どのようになればよいと望んでいらっしゃいます?」
「そうだな」
正直なところ、新参早々でもあり、それに年若くもあって、一日も早く織田家の家風になじみたいことと、戦場での武功ばたらきのほかは考えたことはない。
「お考えでございましょう」
「そう」
考えたことはない。
が、新妻にそう問われれば、伊右衛門にも見栄はある。
「武士とうまれた以上は、葉武者(はむしゃ)にはなりたくはない。一国一城の主と仰がれる身分になってみたいものだ」
「一豊様は、なれます」
と千代は巫女(みこ)のように断定した。
(えっ)
「なれるかね、私が」
おどろいたのは、自分でそんな大それたことを思ったこともない若者だったからである。
「お顔を見、お心をみて、きっと一国一城のあるじにおない遊ばすお方だと思いました」
「千代が?」
つい数日前まで娘っ子だったくせにに何をいう、と伊右衛門にはそんな肚(はら)がある。
「千代だけではございませぬ。伯父の不破市之丞もそう申しておりましたし、母の法秀尼もそのようなことを申してわたくしに聞かせました」
と、千代はうまい。要するに、伊右衛門に自信をもたせることである。自惚(うぬぼ)れという肥料だけが、才器ある男をのばす道だ。
それが武将であれ、禅僧であれ、絵師であれ。
かしこい千代は、その機微を知っている。
「私がなれるかね」
「なれますとも。およばずながら、山内伊右衛門一豊様が、一国一城のあるじになられますまで、千代が懸命にお助けいたします。その誓いを、この夜、たてたかったのでございます」
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う~ん、この一節の中に、なんかコーチング、部下育成のエッセンスが
かなり詰まっている気がします。
①「将来どんなふうになりたいか?」と夢というか、未来のありたい姿を訊いて、
相手に考えさせている。
②その問いかけで、今まで考えたこともなかったことを考えさせている。
(相手は自分で言って、自分で「あぁ、こうなりたいよなぁ」と気付いています)
③根拠のない自信でいいので、自信を持たせるようにしている。
(「○○さんもそう言っていた」というのは、本人から言われるよりも、
妙に納得感がありますよね。)
④最後は、「私が支える」の一言!
いやぁ、ホント司馬遼太郎の本って、勉強になります。
ちなみに、今日は結婚記念日だったんですが、もちろんうちの嫁は良妻なんで・・・。