石破総理の演説を正す
7月20日(日)に行われた参議院選挙。
自民・公明の与党は50議席に届かず、
新聞紙上では歴史的大敗との
見出しが躍りました。
これで衆参ともに少数与党ということに
なったわけです。
今回、自民・公明から議席を奪ったのは、
玉木代表の国民民主党と
神谷代表の参政党。
特に参政党は1議席から14議席となり、
大躍進となりました。
非改選の1議席を含めて15議席になっています。
この差はどこからきているのでしょう?
外国人問題を争点にして若者層を取り込んだから、
消費税減税か廃止か、はたまた給付かを
争点として子育て世代を取り込んだからか・・・
個人的にはもちろんそれもあると思っています。
が、もっと単純なところで
判断されているのではないか
という気もするのです。
一言で言ってしまえば、
「プレゼンテーション力の差」
です。
このプレゼンテーション力には、
伝える内容、伝え方に限らず、コンテキスト、
すなわち“見た目”、“雰囲気”も入っています。
そこの差で負けたのが
自民・公明の与党及び立憲民主党
ではないかと思うのです。
プレゼンテーションの本質的な目的は
「人を動かす」こと。
人を動かすプレゼンテーションこそが
いいプレゼンテーションといえます。
人を動かすには、
相手の頭(論理)と心(感情)を
揺さぶる必要があります。
どちらか片方だけでは行動につながりません。
『あの人の言っていること、頭ではわかるけど、
なんか感じるものがないんだよね』、
そんなこともあるわけです。
ちなみに、石破首相の場合は、
そのどちらもが足りていなかった、
更にコンテキストも足りていなかった、
と思えてしまいます。
特にコンテキスト。
目つきや態度も含め、
もう少し気を使って、何とかならないものかと
思うんですけどね・・・
ただ、今回のブログでは、
そのコンテキストのことは
ちょっと置いておいて、
『分かりやすく伝えるコツ』
についてお話をしたいと思います。
どれだけ論理的な内容であっても
それが相手に理解されなければ
意味がありません。
理解されなければ、
相手が「なるほどなぁ」となって
行動につながることはないですから。
どうしたら分かりやすく伝えられるのか、
石破首相が第217回国会における
内閣総理大臣施政方針演説(今年の1月24日)で
語った内容をネタにして解説したいと思います。
まずは、石破首相の演説内容。
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『我が国の生産年齢人口は、
これからの20年で1,500万人弱、
2割以上が減少すると見込まれます。
このような中、かつて人口増加期に
作り上げられた経済社会システムを検証し、
中長期的に信頼される持続可能なシステムへと
転換していくことが求められます』
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これ、書いた文章を読み上げてるだけで
頭で理解もできなければ、
心が揺さぶられることもありません。
まぁ街頭演説ではなく、所信表明の演説なので
こうならざるを得ないのかもしれません。
しかし、理解されなければ、
何のための所信表明演説なのでしょう。
これを聞いている人たちにとっても
時間の無駄になってしまいます。
だから分かりやすく伝えたい。
これは、石破首相に限らず、
プレゼンテーションする側は
聞いてもらう人たちの時間を無駄にしない、
という意識を持たなければならないと思います。
少なくともまずは分かりやすく伝えよう
という意識を持ってプレゼンテーションを
していきたいです。
そのためのコツをお伝えします。
今回は4つお伝えします。
・疑問形を使う
・数字は比較して使う
・伝える内容を予告する
・伝えるポイントの数を予告する
この4つのコツを
石破首相の演説で使ってみましょう。
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『我が国の生産年齢人口、
すなわち15歳から64歳の人口は
これからの20年で、どれだけ減少するか?
(疑問形を使う)
これからの20年で1,500万人弱が
減少することが予測されています。
現時点での生産年齢人口は7,344万人。
2割以上の減少となるのです。
この1,500万人とはどれぐらいの規模か?
東京23区と横浜市と川崎市を合わせた
人口が1,500万人。
これらの都市の人たちに相当する
生産年齢人口の人がいなくなってしまうのです。
オランダの人口が1,700万人です。
それに匹敵するほどの生産年齢人口が
この日本からいなくなってしまう。
これが20年後の日本の姿なのです。
(数字は比較して使う)
このような人口減少が加速する中、
我々としてどうしたらいいのか?
(疑問形を使う)
新たなシステムへと転換する必要があります。
では、新たなシステムとは
どのようなシステムなのか?
(疑問形を使う)
今から、具体的にお伝えします。
ポイントは大きく3つあります。
(伝えるポイントの数を予告する)
一つ目は、
足りない人手を技術で補うシステムです。
二つ目は、
みんなで働けるシステム。
三つ目が、
都会だけでなく地方も元気にするシステムです。
今からこれら一つ一つについて
具体的にお話をしたいと思います。
(伝える内容の予告)
一つ目の
「足りない人手を技術で補うシステム」とは、
AIやロボットなど新しい技術を使い、
少ない人数でも多くの仕事が
できるようにする仕組みです。
その仕組みを構築していきたい。
二つ目の・・・(略)
次にこのような新たなシステムを構築するには
どうしたらいいのか?
その方向性を我々はこう考えています。
(疑問形を使う&伝える内容の予告)
そのための第一歩は、
人口が増えていた時代に作り上げられた
経済社会システムを検証することです。
具体的にどのように検証するかといえば
(伝える内容の予告)
・・・』
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このような伝え方をすれば、
それなりの時間が必要にはなるでしょう。
しかし、聞いている側の理解度は
高まると思うのですが、いかがでしょう?
ちなみに石破首相、参院選の演説で途中から
何かに感化されたのか、
誰かからアドバイスを受けたのか、
聴衆の感情に訴えることを
取り入れようとしていたように思います。
しかし、残念ながら、
これまた大きく外してしまってました。
左手の甲にメモ書きして、
それをちらちら見ながら演説されても
それにばかり目が行ってしまい、
誰も心が動かされなかったのではないかと
思えてしまいます。。
以下、富山県高岡市での演説。
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『この高岡(富山県の高岡市)、
ここにしかないものってのがたくさんあります。
高岡だけですよ、氷見だけですよ、
あなただけのサービスですよ、
そんなものがここにはたくさんあります。
直径14cmのコロッケというのは、
日本中にここしかない!
丸長(精肉店)さんのコロッケは
実においしい。
ニューオータニ高岡も本当に美味しい。
(精肉)肉富さんのコロッケもおいしい。
天狗乃肉(石崎精肉店)も美味しい。
万葉の里も美味しい。
美味しいコロッケ食べようと思ったら
高岡に来ようねって、
それは日本国中の人が今や知るに至っていて、
世界中の人が高岡のコロッケめがけてやってくる。
だって、ここにしかないんだもの。
直径14㎝のコロッケなんて』
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個人的にはかなり外してしまっている感があります。
なぜなら、この演説を聞いた高岡市の人たちが、
「そうだよ、うちにはコロッケがあるんだ。
これが高岡の誇りなんだ!勇気をもらえた!
自信をもって高岡市をPRしていこう!
ありがとう、石破さん!」
ってなるかと言われたら、ならないですもんね。