新卒一括採用の崩壊”から考えるべきこと
4月22日の日本経済新聞1面記事によると、
2022年度の主要企業2,369社の
中途採用計画数が6万6,384人で、
採用計画全体の30.5%となるとのこと。
中途採用数は年々増加しているようです。
2017年度までは10%台でした。
なぜ、企業が中途採用数を増やしているのか?
デジタルトランスフォーメーション(DX)や
カーボンニュートラル、AI、VR等
高度な能力を要する分野に対応する
必要性の高まりが背景にあるようです。
こうした分野に関しては、
新卒ではなく、ある程度経験を積んだ人材が
求められるということですね。
また、5月6日の日経新聞1面には、
三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクの
2022年度の中途採用数は合計で前年度比8割増
との記事もありました。
三井住友銀行は2倍の100人程度に増やし、
三菱UFJ銀行とみずほフィナンシャルグループも
同程度かそれ以上に中途採用を増やすようです。
その背景には、やはり、
金融サービスのデジタル化、
マネーロンダリング等犯罪への対策、
気候変動対策などに対応できる即戦力の専門人材が
必要とされていることがあります。
従来の新卒一括採用が崩れつつあるんですね。
この変化の速い時代ですから、あっという間に、
「昔は、新卒を一括で採用してたよね~」
なんていう時がくるのではないかと思います。
今はまだ、新卒採用も中途採用もどちらも増やす、
という企業が多く存在しています。
が、今後、中途採用を増やしていく中で、
新卒採用を減らしていくだろうと思うのです。
事実、3メガバンクの新卒採用は減少の一途です。
直近のピークだった15年度は
3メガバンク合計で新卒を5,000人超採用していましたが、
21年度は1,200人台に減少しています。
22年度の採用計画は1,100人とのことです。
こうした経営環境の変化によって、
次のような変化が起こってくると思います。
『今まで、新卒採用に苦労していた企業が
新卒を採用しやすくなる』
大企業が新卒採用を減らしているわけですから。
中小企業や小規模事業者にとっては、
逆に新卒が採りやすくなるでしょう。
ただ、問題はせっかく採用した優秀な新卒が、
やめてしまう可能性が高いということです。
大企業が中途採用を増やしているわけですから。
であれば、中小企業や小規模事業者は、
新卒社員が働き続けたくなる労働環境を
整備することが、これからの経営課題になるでしょう。
これまた日経新聞の1面(5月1日)からですが、
『日本企業の労働環境は改善している。
しかし、社員の「働きがい」は高まっていない。』
というデータが出ていました。
労働環境の改善としては、厚労省によると、
労働者1人当たりの
年間総実労働時間は2020年に1,685時間、
16年比で100時間(5.5%)減っています。
有給休暇取得率も2016年度から7.2ポイント上昇し、
2020年は56.6%と過去最高となっています。
しかし、しかし、問題は・・・
こんなに労働環境が改善しているのに、
仕事に熱意を持ち会社に貢献したいと
考える社員の割合は56%に止まり、改善されていないこと!
(人事コンサル大手、米コーン・フェリー社調べ)
56%という数字は、
世界平均よりも10ポイント以上低い数字で、
調査した23か国中、最下位とのことです。
働き甲斐は、労働時間や有給取得日数と
相関関係がないということなのでしょうか。
中小企業や小規模事業者は、
この環境変化をチャンスと捉えるべきです。
そのためにも、
今のうちから、従来採用できなかったような
優秀な新卒が入社した場合に
働き甲斐が感じられる環境や施策を
整備しておけるといい。
社員が働き甲斐を感じ、
この会社が好きだ、この会社の仲間が好きだ、
この会社に貢献したいという、
いわゆるエンゲージメントを高めてもいける環境や施策。
難しく考える必要はありません。
現状、どのあたりで働き甲斐を感じていて、
逆にどのあたりで働き甲斐を感じていないかを
社員にヒアリングしながら、
できることから、
少しずつ手を打っていければいいでしょう。
お金がないなら、ないなりにできることはあります。
例えば、社員がお互いの存在を
尊重し合える風土を作る。
そのために、社長や管理者が、社員・部下に
「あなたはうちの会社、うちの部署に
良い影響を与えてくれている。必要な存在だ」
というメッセージを常に発信することです。
「○○さんがいるから、
うちの会社が明るい雰囲気になっている」
「○○さんがきっちり役割を果たしてくれるから、
みんなが安心して仕事に取り組めている」
「○○さんが新人を教育してくれるから、
新人の××さんも不安が少なくなっていると思うよ」
というように、社員が周りに与えている良い影響を
伝えられるといい。
あとは、社員が自ら考えたことを
具現化できる仕組みを作ることです。
仕事のやり甲斐や仕事の喜びって、
自分のアイデアや発想を具現化して、
人から喜ばれたときに感じるものですから