スピード・オブ・トラスト、難しいからこそ・・・
「スピード・オブ・トラスト」という
考え方があります。
めちゃくちゃ簡単に言うと、
「信頼があれば、
仕事のスピードは上がり、コストは下がる」
という概念です。
逆に言えば、信頼がないとスピードは下がり、
コストは上がる、ということですね。
たとえば、あなたが
飲食店に入って食事をするとします。
お店とあなたとの間に
暗黙の「信頼関係」が築かれているからこそ、
「早く」・「安く」食事をとることができます。
もし、そこに「信頼関係」が無かったら・・・。
安全な食事であるかどうかを
確認するプロセスが必要になります。
「本当に大丈夫か?この料理は?
検査薬で検査しておこう。
産地はどこか?お店にトレーサビリティの証明書を
出させよう」
となれば、すぐに食事を口にできなくなります。
検査薬代、証明書代などが必要となり、
顧客側にも提供者側にもコストがかかります。
もちろん、現実社会にはこんな状況はありません。
しかし・・・
飲食店におけるお店とお客との間には
このような状況はありませんが、
実際に組織で仕事をしていると、
この「スピード・オブ・トラスト」は、
確かにあるなぁと感じるのです。
先日、こんなことがありました・・・
先にお伝えしておきますが、
決して今からご紹介する事例の会社さんが、
ダメな会社だということでは全くありません。
至って“普通”な考え方の事例です。
事例を通して、お伝えしたいのは、
もしスピードを高め、コストを下げたければ、
「普通」ではなく「信頼関係を構築する努力」が
必要になる、ということです。
とある弊社のクライアント企業さんのことです。
その企業さんで、
毎年行っている主任級の研修。
本来であれば、集合形式で行っています。
しかし、コロナの影響もあり、
今年は、オンラインで実施することとなりました。
毎年、その主任研修では、「テスト」を行い、
理解度を確認しています。
もしテストの点数が悪ければ、
翌年度に再度の受講が求められるという
なかなかシビアな「テスト」なのです。
当然、従来の集合研修であれば、
、
その場でテスト用紙を配布して、
その場で受講者に解答してもらい、
その場で回収しています。
しかし、オンラインの場合は、
そのテスト用紙をどう配布するかが
問題になるわけです。
なぜなら、テスト用紙(問題)を
オンライン上でデータとして配信してしまうと、
その問題が来年度の受講予定の社員さんに
流出してしまう恐れがあるからです。
そこで、その企業さんは、
次のような策を取りました。
解答用紙を別に作成し、は先に配布しておく、
そのうえで、問題をPC画面上で見せ、
、
1問にずつ解答の時間制限を設け、
順次解答用紙に記入してもらう、
解答用紙は、後日PDFにして人事まで送信してもらう。
集合研修で行っていた
研修中の採点、答え合わせ、解説は、
無しとする。
なぜなら、解説のときに答えを書き換える受講者が
いないとも限らないから。
これが愚策だとは全く思いません。
できる限りのベストの策と言ってもいいぐらいです。
講師側としても、人事部が考えたこの策は
十分納得しています。
でも、どうしても集合研修のときには、
必要なかった「手間」が発生するわけです。
解答用紙の作成、画面共有するための問題用紙の作成、
後日のPDF化と送信、その回収・採点等々・・・
現実問題難しいのは承知しておりますが、
もしも、完全に受講者を信じ切れたら・・・
一度書いた答えを自ら採点するときに
書き変える人などいない、
問題を横流しするような人などいない、と。
そうしたら、全く余計な「手間」は必要なくなります。
新たな解答用紙や問題用紙を作る必要もない、
後日改めて送信する必要もない、回収する必要もない、
採点する必要もない、
その場でデータをチャット上で配布し、
ダウンロードすれば済みますから。
ダウンロードしたものに回答してもらって、
データで回収することも可能になりますから。
が、何度も言いますが、
現実問題、難しいのは当たり前です。
ただ、お伝えしたいのは、確かに信頼関係があると、
スピードは高まり、コストは低減できる、
ということ。
だからこそ、信頼関係を構築することが、
組織の中では重要になるのです。
簡単なところでいえば、
上司が、部下を信じていれば、
いちいち、確認しなくて済みますしね。
報告を最小限にできれば、
スピードアップ、コスト削減につながります。
ちなみに、このスピード・オブ・トラストの概念は、
スティーブン・コヴィー氏が
「スピード・オブ・トラスト―
「信頼」がスピードを上げ、コストを下げ、
組織の影響力を最大化する」
というタイトルの書籍で紹介したものです。
その本の中に挙げられていた事例を一つ、
ご紹介します。
『とある男性が開いたコーヒーショップ。
近くの会社に出入りする人たち相手に
ドーナツやコーヒーを販売ししていた。
朝食時や昼食時にはいつも長蛇の列ができた。
その男性はある日、
待ち切れずに他の店に行ってしまう客が
多いことに気づい た。
また、彼一人で切り盛りしていたため、
お客にお釣りを渡すのに手間取り、
それでドーナツやコーヒーの
売り上げが伸びないのでは、と考えた。
そこでその男性は、1ドル札と硬貨を入れた
小さなかごを店の片隅に置き、
そこから客に自分で釣銭を取ってもらう方式に
思い切って切り替えた。
勘定を間違える客や、
こっそり余分に持って行く客がいると思いきや、
結果は逆だった。
大部分の客は極めて正直で、
チップを普段より多めに置いていく客もいたほどだった。
また、お釣りを渡す手間がかからないので、
客の回転率は二倍に跳ね上がった。
さらに、信頼されていることに気を良くした客が
常連になった。
こうして他者を信頼することによって、
コストをかけずに売り上げ倍増を実現したのである。
やはり、信頼 が減るとスピードが低下し、
コストが上昇する。
そして、信頼が増えるとスピードが上がり、
コストが減少するのだ。』
それは分かる、
けど、現実、そこまではなかなか実現できないだろう、
と思われるでしょう。
ご紹介した企業さんだって、
信頼して進めたいのはやまやま、
でも現実にはなかなかそうはいかない、
ってところです。
どうしたらそんな信頼関係が構築できるのか?
スティーブン・コーヴィー氏は、その著書で、
以下の4つを「信頼性の4つの核」として
その方策を挙げています。
1.誠実さ
信頼感関係を築くためには、まず正直であることが大事。
誠実さの中には、正直だけでなく、
高潔であること、有言実行であること、
裏表がないこと、
自分の価値観や信念に従って行動する勇気を持つこと
なども含まれる。
2.意図
人が持つ動機や思惑、更には、行動に対する動機が
率直で相互の利益に基づくようにする。
(簡単言えば、自分だけが良ければいいという考えで
行動しては信頼関係はできない、ということですね。
そうではなく、人の利益を考えた行動をすれば、
信頼関係が構築できるということ)
3.力量
他者の信頼を得るための才能、態度、スキル、知識であり、
結果を出せるだけの力量がなければ、信頼されない。
(スキルのない人がいくら偉そうなことを言っても
信頼されない、ということですね。
信頼されたければ、自分の業務の分野でのスキル(力量)を
持とうということですね)
4.結果
過去の実績、実行力、正しいとをやり遂げるかどうか。
期待されていることを達成できなければ、信頼を失う。
逆に約束したことを果たせば、
実行力のある人物、結果を出せる人物だという評判ができる。
そして、その評判が広まっていく。
まとめると・・・
仕事のスピードを高め、コストを下げたければ、
信頼関係を構築することが求められる。
信頼関係を構築するためには、
「誠実に人に接し」、
「自分だけが良ければいい、と考えるのではなく、
人が得になることを考え」
「自分自身の能力・スキルを高め」
「期待に応え続ける」
ことが必要ってことですね。
こりゃ、難しい!
けど、これを理想として、
その理想を求め続けることは必要ですね。