コラム - 組織のルール

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組織のルール

東日本大震災からの教訓~率先避難者を育成する

昨日、3月11日は、
東日本大震災から10年目でした。

あれから10年なんですね。



あの日は、愛知県の三河方面で
仕事をしていました。

揺れたのは確かに感じたのですが、
仕事をしていた関係で、その後の情報が全くなく、
あれほどの被害が出ているとは、
夕方過ぎまで知りませんでした。


帰宅途中の駅で号外を手にして、
被害の大きさを知り、
とてつもないことが
起こっているのだと思いつつも、
どこか現実感を伴っていなかったのを
覚えています。


その後、津波の被害だけではなく、
原発の問題も発生し、
何とも言えない陰鬱な気持ちになっていました。


5月ごろまで仕事をしていても、
家族で出かけても、何をやっても、
楽しく感じなかった記憶があります。

実際に被害を受けられた方々にしてみると、
こんな生易しい感情ではないとは思いますが・・・。


ということで、
今回は東日本大震災関連の記事を
お伝えしたいと思います。



この時期は、
東日本大震災関連のテレビ番組が多いです。

今年は発生後10年ということで
特に多くの番組が流れていたのではないでしょうか。


その一つで、個人的には非常に興味深い
内容が取り上げられていました。


3月6日に放映された
「NHKスペシャル~避難のカスケード」
での内容。


津波から避難できて生き延びられた人と、
避難できなかった人と、
その生死を分けたのはいったい何だったのか、
という追跡調査の結果です。


2,400人の行動調査からその生死を分けた理由が
浮かび上がったというのです。


その調査によれば、
避難行動を始めた1,182人のうち
周りからの影響で非難した人は977人、8割以上。


避難をして助かった人の8割は、
自ら率先して避難をしたわけではなく、
周りの人の避難行動に影響されて避難をした、
らしいのです。


人は非常時事態に追い込まれたとき、
どう考えるのか?

多くの人が根拠のない楽観視を
してしまう。

「あの堤防を超える津波が来るはずがない」

「さすがにここまで津波は来ないだろう」

「この避難所までくれば大丈夫」

と・・・。


人間、行動をするには
それなりのエネルギーが必要です。


そのエネルギーを使う行動をしないために、
なんだかんだと理由をつけて、
しかも根拠のない理由をつけて、
行動しない方に意識が行ってしまう。


こうした避難に踏み切りにくい
意識や状況を打ち破り、
真っ先に避難し始める人を

「率先避難者」

と呼ぶそうです。


「率先避難者」に影響され、
危機に気づかなかった人も
行動を開始するようになる。

自分の周りに「率先避難者」がいたかどうか、
これが津波避難において
生死を分けたポイントだというのです。


周りの人が逃げているから自分も逃げる、
ということですね。


ちなみに危機に気づいた住民が5人いただけで
44人の命が救われた地域もあるようです。


で、この周りからの影響を受けるというのは、
当然ながらに逆のケースもあるわけです。


京都大学の巨大災害研究センターの
矢守克也教授曰く、


「自分がどうするかが、
周りの人に影響を与えてしまう。
大丈夫じゃないかと何も行動を取らなければ、
何もしない自分を見ている人が
周りにいることも頭に入れておかないといけない」

とのことです。


また、東京大学大学院の片田敏孝特任教授は、
次のように言っています。

「みんなが逃げるという方向に地域全体が
その雰囲気になるのか、

みんながとどまる雰囲気になるのか、

それを分けるのは、
偶発的な率先避難者であるならば、
初めから地域に
その役割りの人を置いておくのも一つの手段。


逃げるぞ、逃げるぞと声を掛けながら、
何人もが地域の中で
率先避難者になってもらう。

いち早く地域全体に避難の輪が広がることに
繋がっていく」


非常に興味深いです。


これ、そっくりそのまま企業の組織にも
当てはまると思うんです。

危機感を全ての社員に持たせるのは難しい。

社長と同じレベルの危機感を
全社員に持たせるなんてほぼ不可能です。



社員の危機感に基づく行動を
促したいのであれば、

「率先して危機感を発信する人(率先避難者)」

を選び、その人に周りの人たちへ行動を
誘発してもらう行動を取ってもらう。


こんなことも企業の生き残り策の一つとして、
あり得るのかもしれません。


もし、その率先避難者を企業内に設定するとしたら、
できれば、管理職ではない方がいいでしょうね。


組織において、こうした影響は
上下間で発生するというよりは、
恐らく左右間です。


ですので、一般社員の人の行動を
促したいのであれば、
一般社員の中から、
「率先避難者」を選ぶといいでしょう。


できれば、各年代に設定すると
いいのではないかと思います。


ただ、問題があるとしたら、
「あなたを率先避難者に任命します」
というのは言いにくい点でしょう。


地域で「率先避難者」を
設置するようにはいかない思います。


できれば、上の人たちが意識的に、
危機感を醸成させる人を育成して、
行動を促すよう仕向けていくようにするのが
現実的ではないかと思います。


社員全員に危機感を持たせようとするのではなく、
危機感を持たせられるキーマンを見つけて、
その人に影響を及ぼしてもらう。


あの東日本大震災から学ぶことがあるとしたら、
そんな組織戦略もあるかもしれません。


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