コラム - 経営者へのラブレター

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経営者へのラブレター

検証!2大シネコンの戦略~イオンシネマ VS TOHOシネマズ

7月1日のWBS(ワールドビジネスサテライト)で、

シネマコンプレックス(同一の施設に複数のスクリーンがある映画館)、

いわゆるシネコンについての特集が組まれていました。

今回のメルマガでは、このシネコンを題材に「経営戦略」について

考えてみたいと思います。


まずは、シネコンの動向について。

シネコンのスクリーン数は、2000年に1,123だったのが、

その後急成長をし、2008年には約2,800までになったそうです。

が、2008年以降は伸び悩み、2013年の時点で2,831と、

ここ数年は、ほぼ横ばいの状態。


プロダクトライフサイクルでいえば、導入期・成長期を過ぎて、

成熟期を迎えたということでしょう。


で、WBSの特集では、シネコンの大手2社であり、ライバル関係にあるといわれる

「イオンシネマ」と「TOHOシネマズ」がそれぞれどのような戦略で

臨んでいるのかが紹介されていました。


それぞれの企業の戦略の違いが鮮明に表れて、

なかなか興味深く、戦略を考えるうえで、

示唆に富むものでした。


紹介されていた2社の戦略をお伝えする前に、

経営戦略とは何かについて、考えておきましょう。


ちょっと難しい表現をすると、

『さまざまな角度から情報を分析し、

競合にない自社の本当の強み(コア・コンピタンス)によって

顧客(ターゲット)にとっての価値を創造し、

他社との差別化ポイントを作り、

顧客(ターゲット)が得る価値を継続的に

提供していける仕組みを作る考え方・方向性(指標)を定義したもの」

ってことだと考えています。

なんのこっちゃ、よく分かりませんね。

もう少し分かりやすく具体的に言うと、次のことを決めるってことです。


①どこで、誰と戦えば、勝てそうなのか?

②誰を最も喜ばせるのか?
(誰を喜ばせると自社が一番になれるか)

③どのように顧客を喜ばせるのか?
 (自社の本当の強み(コア・コンピタンス)を使って、
 どんな価値を創造することで、顧客を喜ばせるのか?)

④勝ち続けるためには何が必要なのか?
 (競争優位性を継続的に構築するために
 どんな強み・独自技術を伸ばし、開発していくのか?)

⑤どのように価値を理解してもらうのか?
 (どのようなメッセージを伝えれば、
  効率的に顧客に価値を理解してもらえるのか?)


これでも、ちょっと理解しがたい感じがしますね。

一言で言えば、

「強みを生かして、ターゲット顧客にとっての価値を創造し、

勝ち続ける、そのための方策」

だと考えています。


実際に、イオンシネマとTOHOシネマズの戦略をみていきましょう。

(あくまでも、WBSで紹介されていた内容に基づきます)


①どこで、誰と戦えば、勝てそうなのか?

イオンシネマは、

「郊外の大型ショッピングモール(当然イオンモール)内に出店」。

TOHOシネマズは、「都心への出店」です。


この時点で、戦略的に言えば、

この2社は競合相手ではないってことになります。

戦う場所が全然違うわけですから。


TOHOシネマズの新規開業でいうと、

2014年3月に日本橋に、2015年春には新宿歌舞伎町に、

2017年秋には東京上野に出店する予定とのこと。

ちなみに、TOHOシネマズ新宿でいえば、

新宿ピカデリー、新宿バルト9などが、立地だけでいえば競合相手になります。

決して、イオンシネマではありません。


②誰を最も喜ばせるのか?
(誰を喜ばせると自社が一番になれるか)

イオンシネマの最も喜ばせたい顧客(ターゲット)は、「ファミリー」。

郊外のショッピングモールに立地するわけですからね。

TOHOシネマズのターゲットは、「女性」。


③どのように顧客を喜ばせるのか?
 (自社の本当の強み(コア・コンピタンス)を使って、
 どんな価値を創造することで、顧客を喜ばせるのか?)

イオンシネマの強みは、

「シッピングモールに立地していて、

映画以外の様々な業種のお店と協同できる」

ということでしょう。

その強みを活かして創造した価値の一つが、

モール内のブライダル会社と共同企画したサプライズ家族婚。

WBSで紹介されたいたのは、こんな感じ。

結婚式を挙げていなかった夫婦の奥さんが仕掛け人となって、

突如、映画のスクリーンに、家族の映像が流れる。

旦那さんはびっくり。

映画を観終わった後には、モール内で家族婚が準備されている。

まぁちょっとした“ドッキリ”ですね。


モール内にブライダル会社があるという強みからの価値創造なわけです。


TOHOシネマズの場合は、ターゲット顧客は「女性」です。

その女性が喜んでくれるよう創造した価値は、

・隣の人が気にならないように仕切られたシート

・化粧直しのスペースをゆったり取ったお手洗い


ちなみに、女性をターゲットにしながら、新宿歌舞伎町に出店って、

矛盾しているように感じますが、

今後、町ぐるみで駅からTOHOシネマズ新宿までの道を女性でも

歩きやすいように変える計画とのことです。

これも女性の顧客を喜ばせる価値ってことでしょう。

TOHOシネマズの大きな強みは、自治体を巻き込めるということですね。


と、このように2社のシネコンの戦略を検証してみました。


戦略を考えるうえで、ポイントになるのは、

ターゲットを明確にし、

独自の強みを活かして、

ターゲットにとっての価値を創造し続けるってことです。


その点では、2社の戦略は非常に理にかなっていると思います。

それと、こうして比較検証してみることで、

戦略の違いが鮮明にわかり、戦略の本質に迫れる気がしました。


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