感情で発想し、論理を積み上げる
「情緒的にものを考える人は経営者には向かない」
ヤマト運輸の元社長、「クロネコヤマトの宅急便」の
生みの親である小倉昌男氏の言葉です。
小倉氏は、経営は論理の積み重ねであり、
「論理的に考える力」こそ、経営者に一番必要な条件だと考えていたそうです。
小倉氏の個人宅配の採算に関する考えは以下の通りでした。
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収入は、集配車が一日に何個集荷できるかと言う荷物の『密度の濃さ』で決まる。
需要は人口の関数。
車両の作業効率は受け持ち区域の広さによって変わるため、
初年度は赤字でも、何年かすると損益分岐点を超すかもしれない。
(出展:日経トップリーダー2010年6月号より)
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数式で表わすと、
売上(収入)=集配車の台数×集荷個数×単価
重要=人口×□(何らかの数値)
という感じでしょうか?
とにかく論理的に項目を選択し、数字を使って考えていく、
漠然とした感覚や何となくの雰囲気で
判断をしてはいけないということでしょう。
しかし、あの小倉昌男にたてつくわけではありませんが、
私は、論理的ばかりではなく、ひらめきとか思い付きとか、
「情緒的に考える」ことも大切なのではないかと思うのです。
先日(12月22日)、「カンブリア宮殿」に出演していた
レンタルチェーンのツタヤ、Tカードを手掛ける
CCCカルチュア・コンビニエンス・クラブ 社長の
増田 宗昭(ますだ・むねあき)氏が番組の中でこんなことを語っていました。
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僕ね、社員の人によく言うの。
人間って頭と心と体で成り立ってて、体はいろんなものを欲しますよね、自動的に。
人に対して機能するのは、ここ(頭)とここ(心)だと思うんですよ。
ここ(頭)っていうのは、使っているときってだいたいね、
自分を守るために使うんですよね。
で、ここ(心)って人のために使うんですよ。
例えば、そこに倒れている人がいたら、「助けなきゃ」っていうのは、
なんか「助けねぇとカッコ悪い、みんな見てるし」って考えるのが頭で、
「助けなきゃ」って思うのはこっち(心)だと思うんですよ。
ところが、情報化社会っていうのはこっち(頭)ばっかり強化するから
みんな自己防衛になっているような気がするんですよ。
こっち(頭)を強化していることとこっち(こころ)を強化しているバランスが、
崩れているのが、僕、今の社会だと思うし、
企画っちゅうのは、こっち(頭)とこっち(心)どっちで生まれるかというと、
絶対こっち(心)なんですよ。
「こんなんあったらいいな」って「こんなんやったらみんな喜ぶよね」って。
新しいもの作っていくっていうのは、こっち(心)が強くないと難しいと思いますね。
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論理的に発想するのではなく、ひらめきを大事にしよう、
と言っていると解釈すれば、
小倉昌男氏と反対のことを言っているようにも聞こえます。
が、きっと小倉氏も宅急便を思いついた時は、
論理的に発想したわけではなく、
「こんなんあったらいいな」「こんなんやったらみんな喜ぶよね」って
ところからだったのではないかと思います。
小倉氏と増田氏の話を統合すると、こんなふうに言えるのではないでしょうか?
「ひらめきや思いつきの発想を大事にしながら、
それを練り上げるときには、論理を積み上げていこう」
バランスが大事ですよね。