若田光一さん曰く「リーダーとは・・・」
先日(7月29日)、「ワールドビジネスサテライト(WBS)」に
日本に帰国したばかりの宇宙飛行士、若田光一さんが生出演されていました。
ご存知の方も多いと思いますが、
若田光一さんは、昨年11月7日にロシアのソユーズ宇宙船(TMA-11M)に搭乗し、
国際宇宙ステーション(ISS)に移動、その日から、
約6ヶ月間の第38次/第39次ISS長期滞在ミッションを開始。
今年3月9日には、第39代のISS船長(日本人初)に就任しました。
5月14日に地球に帰還し、7月29日に日本に帰国。
今回の生出演に至ったということです。
WBSで語られたのは、経済番組だけに、宇宙がどうのということではなく、
「船長(リーダー)としてどう行動したか」
「船長(リーダー)としてどうチームをまとめたか」ということで、
非常に興味深いものでした。
「どうチームをまとめるか」、若田さんが語っていたのは、
全体を通して次のことに集約されていたと思います。
①信頼関係を築く
②価値観を共有する
まぁチームビルディングとしては、特に目新しいことでもないんですが、
やはり実績を残した人が言う言葉には重みがあります。
さらに「信頼関係を築くために、価値観を共有するために、
リーダーとして、何をすべきか?」に関して、
若田さんが言っていたのは、次のようにまとめられると思います。
・「相手の立場に立って考える」
・「コミュニケーションの量を増やす」
『チームをまとめるためには、信頼関係を構築し、価値観を共有する。
信頼関係を構築し、価値観を共有するためには、
リーダーとして相手の立場に立って考え、コミュニケーションを増やす』
ということですね。
リーダーの行動として、当たり前と言えば、当たり前なんでしょうけど、
実は、これがなかなか難しいことではないかと思います。
具体的に若田さんの言葉を引用してみましょう。
今回のプロジェクトでは、貨物が遅れる、故障が起こるなど
不測の事態が相次いだそうです。
そのことに触れて、若田さん、以下のように語っていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『みんながチームワークをきちんと維持して仕事ができるように、
信頼関係を維持した状態で仕事ができるように努めました。
一人ひとりのスケジュールに無理が行かないように気をつけました。
船長ひとりの私が頑張ってしまうと、
仲間もそれと同じように頑張らなければいけないという
心理的なストレスにもつながりますので、
きちんとみんなの意見を取り入れたうえで
チームとしての意見をまとめていくという方法を取りました』
(以上)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「リーダーである俺が頑張ればみんなも頑張るはず」というのは、
相手の立場で考えているのではなく、自分の立場で考えていること
なのでしょう。
もちろん、常にこの民主的なリーダーシップが、
うまくいくかといえば、決してそうではありません。
緊急時には、みんなの意見を聞いているわけにはいかず、
トップダウンにならざるを得ないでしょう。
が、話し合いが持てることであれば、
みんなが意見を言える場を作り、出された意見をまとめていくのは、
リーダーの大きな役割です。
ただ、この時にどうしてもリーダーとして必要な能力があります。
部下の話を受け止めて、意見調整していけるだけの、
コミュニケーション力と問題解決力。
これがないと、メンバーが意見を言える場を作っても、
結局は、最終的にリーダーの意見が通って終わりってことになりかねません。
そうなると逆にメンバーの不満が募ってしまいます。
もう一つ若田さんの言葉を引用します。
「価値観を共有するために、コミュニケーション量を増やす」という
ことに関して、若田さんが語っていたのは、以下のことです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何で私たちが宇宙で一緒に仕事をしているのかと考えると、
この人類としての新しいフロンティアを開拓する仕事を
世界の人達と協力することによって、より平和な世界を実現する。
日常の生活を豊かにする技術も生まれてきてますけども、
やはり国際宇宙ステーションというのは、
国際協力、平和のシンボルだと思うんですね。
ですから宇宙飛行士全員が同じ価値観を共有することで、
ひとつのチーム、家族のように付き合っていける。
ひとつのチームとしていい仕事していこうという意志をもって
みんなが仕事できたのでチームが一丸となって仕事にあたれたと思います。
(以上)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
チームとしての目的を共有する、
これはチーム作りの基本中の基本ではあります。
が、どうしても多くの組織では、目の前の目標ばかりに気が行ってしまい、
何のためにこの仕事をうちのチームはやっているのか、
世の中の何を変えたいと思って我々は仕事にあたっているのか、
ということが考えられずにいます。
もちろん、目標を達成することは絶対的に大切なことです。
しかし、それだけでは足りないんです。
リーダーとして、「目標必達!」とか「目標は死守する!」とか言って、
目の前の結果数値的なことばかりにとらわれていないで、
「何のために、我々は集まっているのか?何のために頑張っているのか?」
「世の中の何を変えようとしているのか?」
「世の中にどんな影響を与えようとしているのか?」
なんてことを食事でもしながら、語り合える場を作れるといいですね。
食事に誘っても若い奴らはついてこない、って嘆く管理職の方も
多いんですが、その一つの原因は、食事の場が面白くないから、
ってこともあるのではないでしょうか?
上司が、自分の話ばかり部下にしていたら、部下も面白くないです。
みんなで「自分たちの使命とか目的とか」そんなことについて
語り合ってみたら、面白いって思ってもらえるかもしれません。
リーダーとして場を盛り上げて、その場を仕切れる力は必要になりますが。
ちなみに、若田さんが語っていた中で、
『チームワークを高めるために、メンバーで食事を一緒に取るようにした。
が、しかし、メンバーの中には、一緒に食事をとることで、
自分のペースが乱されて、ストレスになるメンバーもいた。
そのあたりは、ちゃんと調整をした』というのがありました。
非常に臨機応変でいいですよね。
これもまた相手の立場に立った発想ができるからこそ、
こうした対応ができたのではないでしょうか。
最後に一つ。
若田さんのような民主的リーダーシップが効果的だったのは、
クルー一人ひとりが、知識も経験もあり、
自ら考えることができる成熟したメンバーだったからです。
知識も経験も少なく、未成熟なメンバーが多いチームの場合は、
チームをまとめ、成果を出すために、
親分肌的な独裁的リーダーシップが効果的だったりします。