このチラシでは助けられんわ~
先日、新聞の折込チラシとして入ったチラシです。
我が家の近く(1kmぐらい)にある焼き鳥屋。
昨年オープンしたまだ新しい店です。
名前はあえて出しません(チラシの写真にはモザイクをかけてあります)。
で、このチラシなんですが、
これを見てどう思われました?
もし、あなたがこの店の近所に住んでいたとして、
「助けてください」という言葉にほだされて、
一度行ってあげようかな、と思われますか?
私は、残念ながら、そういう気持ちにはなれませんでした。
「冷たい人」って言われてしまえばそれまでですが、
このチラシで、お店の売り上げがアップするほど、
商売は甘くないですよね。
たとえ、このチラシで10月の来店者が300人になり、
存続できたとしても、悲しいかな、
こんなチラシを作るようなお店では、
そんなに将来的に永続できるとは思えません。
もちろん、頑張って営業されているでしょう、
このチラシを出すのも勇気が必要だったでしょう。
もちろん、それなりの経費もかかっているでしょう。
しかし、厳しい言い方になりますが、
根本的に商売に必要な考えができていないんです。
このチラシの何がいけないのか、
なんとなく、これでは人は集まらないだろうなぁと
感じられるとは思いますが、
ここはちょっとマーケティングっぽく、
解説を加えてみたいと思います。
何が良くないか。
チラシが完全に「お店本位」になっているんです。
「お客様がこのお店に足を運ぶメリット」や
「お客様へのオファー(提案)」が全く書かれていません。
チラシとは、お店がお客様の行動を促すプレゼンテーションです。
それが自分本位になっていては、相手は動きません。
今一度、どんな内容が書かれてあったか見てみましょう。
以下、主要な箇所の文章です。
……………………………………………………………………………
「今までご来店いただいた方、まことにありがとうございます。
これからご来店予定の方、是非ともお早めにお願いします。
10月の来店人数が300名に届かない場合は閉店となります。
本当はこの場所で皆さんに楽しんでいただくために
このお店を続けていきたいのですが、開店以来1年以上
ずっと赤字なんです(ToT)
なんtかこのお店を皆さん、助けてくださいm(_ _)m
ご来店をお待ちしておりますm(_ _)m」
(以上)
……………………………………………………………………………
赤字続きのお店に行く理由がどこにも見当たらないですもんね。
赤字続きってことは、何か理由がある。
その理由として、まず浮かぶのは、「まずいんだろうな」ってこと。
まずい飲食店に、わざわざ行く理由は普通はありません。
もし、次のような内容が書かれていたらいかがでしょう?
「このお店を立ち上げたのは、
あまり知られていない本当に美味しい○○地鶏を、
※本当にこのお店が、そんな地鶏を使っているかどうかはわかりません
家族みんなで安く手軽に食べてもらいたいとの想いからでした。
私が、子供の頃父と母に連れて行ってもらった近所の焼き鳥屋。
あの炭焼きの煙とタレの香ばしい匂い。
子供心にすごく幸せな気持ちになったのを覚えています。
家族との暖かい時間を美味しい○○地鶏を食べながら、
過ごしていただきたい。
それゆえ、低価格を維持するために、
あまり立地のよくない場所に出店せざるを得ませんでした。
また、大きく宣伝広告を出すこともできませんでした。
ですから、うちのお店を多くの人に知っていただくことが、
思うようにできず、この○○地鶏の美味しさを伝えきれませんでした。
家族連れの方々にも思うようにお越しいただけませんでした。
○○地鶏を精魂込めて提供していただいた養鶏場の方々にも、
申し訳ない気持ちでいっぱいです。
あとは何も言いません。
どうか一度私が、心を込めて焼いたうちの焼き鳥を
家族みんなで食べに来てください。
小学生以下のお子さま連れの方で、
「助けに来たよ」と言っていただけた場合には、
生ビール1杯を無料もしくはソフトドリンク1杯を無料に
させていただきます。」
お客様が来店するメリットとオファーは入れてあります。
プレゼンテーション(チラシ)は、
伝える人にどんなことを感じてもらい、
どんなことを考えてもらい、どんな行動を起こしてもらうのか、
それを考え、実現していかなければなりません。
相手のことを考えていないと本当に独りよがりの
プレゼン(チラシ)になってしまうんですね。
つまり、「自分はこんなに大変なんです」という自分の置かれた状況や、
「とにかく来てください」という相手への要望だけの、
自分の伝えたいことだけを伝えるプレゼン(チラシ)です。
これでは、人は動きません。
それと、もうひとつこのチラシを見て感じたことがあります。
多分、このチラシを作った人、それなりにマーケティングというか、
チラシのつくり方なんかを勉強したことがあるのかなと思います。
チラシの一つのノウハウとして、
「自分の辛い感情をストレートに表現する、
それで読み手の感情に訴え、共感を呼ぶ」というのがあるんです。
多分、それをどこかで読んで、
実践したんじゃないでしょうか。
しかし、残念なのは、
表面的なことしか理解していない感じなんです。
あくまでも、自分本位ではなく、相手へのオファー(提案)や、
メリットを伝えなければ、いくら辛い感情を訴えたところで、
共感してはもらえません。
こうした本質的なことを理解せずに、
表面的なテクニックばかりに走ってしまうと
こういうことになるんでしょうね。
偉そうに言っていますが、
私自身も多分、こんなこと何度も経験していると思います。
気づかないうちに・・・。
気を付けなければなりません。