落合ドラゴンズから「連合の原理」を考察する
昨日、行ってきましたナゴヤドームへ!
落合ドラゴンズ、最後の年、
クライマックスシリーズのファイナルステージ第5戦。
この試合に勝てば日本シリーズ進出が決まるという大事な試合。
試合自体は、相変わらずの貧打で、全然打てない。
でも、先発吉見の投球を見ていたら、負ける気は全然しなかったですね。
終わってみれば、3安打で2点を取った中日が5安打のヤクルトに競り勝ったという、
今年を象徴するような試合展開でした。
落合監督になって以来8年間で、野球界は、
近鉄、オリックスの合併やダイエーの身売り、楽天の球界進出、
プレーオフ(現クライマックスシリーズ)の導入など、
かなりの変動がありました。
が、この8年間、ほぼ毎年この時期まで野球が楽しめたのは、
本当にうれしいことでした。
落合監督以前は、6月ごろには野球に対する関心がほぼなくなってしまうというシーズンが
そこそこありましたからね。
それだけ落合監督が中日を強くしたということです。
これだけ継続して結果を出し続けられる監督は、
今の野球界にはそんなにはいないですよね。
選手起用や采配などでいろいろ批判もありましたが、
やはり強いチームを作り、「結果を出し続けた」ということで、
落合監督の人気は非常に高いものがあると思います。
昨日も、ナゴヤドームで「落合コール」が頻繁に起こるなど、
落合監督の人気の高さを実感させられました。
(正直、ドラゴンズの次期高木監督では、
またあの弱いドラゴンズになってしまわないかとかなり心配しています。
やる前から言ってちゃいけないけど)
と、ここで思い出したのが、マーケティングのバイブルともいわれる
ロバート・B・チャルディーニが書いた「影響力の武器(第2版)」に出てくる一節。
影響力の武器は、人間心理からマーケティングを捉えた興味深い内容の本です。
第5章「好意」の中でこんなことが言われています。(P315~316)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『「他のすべての条件が等しければ、人は自分と同じ性別、
同じ文化、同じ地方の人を応援する・・・・
その人が証明したいと思っているのは、
自分が他の人より優っているということなのである。
応援する相手が誰であれ、その相手は自分の代理になる。
そして、その人が勝つということは自分が勝つことと同じなのである」
中略(以下も、影響力の武器からの引用文)
このように、私はたちは自分の優位性を証明するために、
自分と結びつきがあるスポーツチームが勝つことを望むのですが、
誰に対してそれを証明しようとしているのでしょうか。
もちろん、一つには自分自身に対してでしょう。
ただ、同時に全ての他者に対しても証明しようとしているのだと思います。
連合の原理にしたがえば、たとえ表面的にでも(住居の場所など)
自分と結びついた成功で自らの身を包むことができれば、
私たちのの公的な威信は高まることになるはずです。
中略
たとえば、おそらくご覧になったことがあるでしょうが、
地元チームの勝利の後にファンが一群となってテレビカメラの前に殺到し、
人差し指を高く突き上げて「俺たちはナンバー・ワン!俺たちはナンバー・ワン!」と
叫ぶのは珍しいことではありません。
その叫びは、「彼らがナンバー・ワン」というものでも、
また「俺たちの(our)チームがナンバー・ワン」というのでもない点に注意が必要です。
その代名詞は「俺たちは(We)」であって、これを使うことによってチームと自分との
つながりをできる限り緊密にしようとしているのです。
敗北の場合には、このような事は決して起こらないことにも注意してください。
テレビの視聴者が「俺たちは最下位だ!俺たちは最下位だ!」
という叫びを聞いたことはないはずです。
地元チームの敗北に対して、私たちは距離を置こうとするのです。
このような場合には「俺たちは」という代名詞は、
突き放したような「彼らは」という表現ほどには好まれません。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今年のドラゴンズは、7月ごろまでは、なかなか勝てず低迷していました。
それを思うと本当によく優勝できたものだと思います。
チームが勝てないときは、ナゴヤドームにもあまり観客が入っておらず、
テレビを見ていても空席が目立っていました。
落合監督への風当たりも強かったのではないでしょうか?
が、こうしてセ・リーグ制覇を果たし、クライマックスを勝ち進めば、
ナゴヤドームも満員になりますし、落合監督への評価も高くなります。
弱いドラゴンズは、「彼ら」であり、落合監督は、「彼」なんですね。
強いドラゴンズになれば、「俺たち」であり、「俺たちの落合」なんでしょう。
「連合の原理」が働いて、
自分が応援するドラゴンズが勝てば、その他のチームのファンよりも、
自分自身が優っているような心理が働く。
名古屋の人にとっては、地元に本拠地を置くチームであり、
名古屋という共通項を持っているがために。
決して、人と比較したときの優位性について因果関係などないにもかかわらず。
マーケティング的にいえば、いかに自社に好意を持ってもらい、
ファン化させていくうえで、こうした「連合の原理」を知っておいて、
実践することが大切だということですね。