項羽と劉邦に見る上司像の比較検証~仕事を任せられるかどうか
私が好きな司馬遼太郎の小説「項羽と劉邦」にこんな一節が出てきます。
項羽が、劉邦との戦いが長引く中、劉邦の家臣韓信(かんしん)に
同盟を結ぶための使者を送るシーンです。
韓信は、敵である項羽との同盟を結ぶよう使者に説得されますが、
深く考えることなく「否」と答えを出してしまいます。
その時の使者と韓信のやり取りが以下の通り。
(使者)「私は項王のおおせを畏(かしこ)み、千里の道をこのようにしてやってきた。
であるのに、一考もせずに即座にお断りになるとはどういうわけだ」
「理由(わけ)か」
韓信の感情がにわかに激してきたことが、
その大ぶりな横顔に散るように血色がひろがったことでもわかる。
「私は、項王がきらいなのだ」
「きらいとは、これは婦女子のような言葉を」
(使者の)武渉(ぶしょう)も、狼狽している。
「なぜお嫌いなのです」
武渉のことばが、丁寧になった。
「私を用いなかったからです」
韓信は、自分が楚の軍営にいたとき、身分は郎中(ろうちゅう)にすぎず、
しごとといえば宿衛のときの番士にすぎなかった、といった。
「進言、献策、一つとして用いられたことがない」
「項王がお忙しかったからでしょう」
「当時、忙しかったのは、項王だけではない」
敗者にちかい漢王はそれ以上に多忙だった、と韓信はいう。
「では、漢王については、如何(いかん)」
武渉は、問うた。
「好きです」
「理由は?」
「私を用いてくれたからです」
以上
組織において、特に自分の能力を高く信じている部下にとっては、それ相応の役割を任せないと、
リーダーに対して貢献の意欲は低くなります。
またチームに対する貢献意欲も低下していきます。
ちなみに、韓信はめちゃくちゃできる部下です。将軍として、ずば抜けた力を発揮します。
仕事を任されること、これが部下にとってやる気を高め、
チームへの貢献意欲を高めるポイントになります。
また、なぜその役割を任せるのか、その部下の長所と期待とを挙げて、伝えてあげられるといいでしょう。
追伸
ご存知のとおり、劉邦が漢の高祖となりますが、
その後、何かと劉邦の嫁さんから韓信は因縁をつけられ、
最終的には斬首の刑に処せられるんですよねぇ~。