ヤマダ、車を売る・・・ファイブ・フォース・モデルで考える
7月6日の日経新聞(2面)記事によれば、
『家電量販店最大手の
ヤマダホールディングス(HD)が
三菱自動車と提携し、
電気自動車(EV)販売に再度乗り出す』
とのこと。
ヤマダ電機は、2010年12月にも
三菱自とEV販売で提携しています。
が、3年弱で終了。
今回は、そのリベンジってことですね。
一度、失敗したことに再チャレンジ、って
なんかいいですよね。
現時点では、三菱自動車のみの販売ですが、
将来的には他メーカーの販売も
視野に入れているとのこと。
今回は、このヤマダ電機の戦略を
「ファイブ・フォース・モデル」と
使って分析してみたいと思います。
「ファイブ・フォース・モデル」。
企業の経営環境、
特に競争環境を分析する手法の一つです。
なんかネーミング、めちゃくちゃカッコよくないですか?
経営の勉強をし始めると比較的早い段階で学ぶ
分析手法ではないかと思います。
私は、30歳の時に中小企業診断士の資格試験を通して、
経営の勉強をし始めたのですが、
最初の科目(経営戦略論)で学びました。
この分析手法に接したとき、
ファイブ・フォース・モデルというネーミングが
『なんかめちゃくちゃカッコいいなぁ』と
感動したのを覚えてます。
マイケル・ポーターという米国の経営学者が考えた手法で、
5つの競争の視点から、自社がおかれた競争環境を
分析するものです。
マイケル・ポーター曰く、
企業には以下の5つの圧力(フォース)が掛かっていると。
①同業他社(競合企業)
②新規参入業者
③代替製品またはサービス
④供給業者(サプライヤー)
⑤顧客(バイヤー)
マイケル・ポーターに言わせれば、
取引先も、お客様も企業にとっては、
ときに圧力(フォース)になるということですね。
まず、自動車メーカーの系列ディーラーの
立場で考えてみましょう。
上記の5つの圧力(フォース)でいえば、
ヤマダホールディングスによる自動車販売再開は、
②の新規参入業者の圧力(フォース)と
いうことになるでしょう。
ディーラーの立場から言えば、
「家電量販店」が競争相手になるとは
考えにくいことだったことでしょう。
なぜなら、自動車販売という業界は、
『参入障壁』が比較的高い業界ですから。
参入障壁とは、
その業界に新規参入するとき難しさを表します。
参入障壁が高いとは、新規参入しにくいということ。
自動車販売業界には、
以下のような参入障壁の高さがあると思います。
・流通チャネル:
業界内における流通チャネルが固まっている場合は、
参入障壁が高くなります。
・政府の政策:
業界に対し、政府が法規制や許認可制などの
規制を敷いている場合は参入障壁が高くなります。
事実、ヤマダホールディングスの山田昇会長兼社長も
以下のように語っています。
「今の自動車業界は既得権益がすごく、
国に守られている。
だからこそ今のトヨタ自動車があると思っている」
その他、「規模の経済」、「巨額な投資の必要性」、
「仕入先変更コスト」、「製品の独自技術」、
参入障壁の高さを決める要因になります。
ヤマダホールディングスが自動車を売るとなれば、
今後、自動車販売店(ディーラー)は、
ヤマダに勝てる戦略を
構築していかなければいけないということになります。
次に、自動車メーカーの立場で考えてみましょう。
自動車メーカーにとって、ヤマダホールディングスは、
⑤顧客のフォースになり得るでしょう。
自分たちの車の販売先ではありますが、
圧力は掛けてくるはず。
新聞記事によれば、
『EVの価格面では、
メーカー側からのリベート(販売奨励金)などを
原資に値引きすることで
顧客の法人や消費者に安く売っていく方針だ』
とのことですから。
自動車メーカーも自動車ディーラーも
このフォースへの対応が必要になっていくでしょう。
マイケル・ポーターは、その対応方法も提示しています。
「3つの基本戦略」
英語でいうと、「Porter's three generic strategies」。
これは、私が30歳の当時、英語では習っておらず、
ネーミングのカッコよさを感じてませんでした。
ポーター氏は、3つの基本戦略のうち一つを
自社の戦略として採用することで
競争優位の確立を目指すとしています。
3つの基本戦略については、
また改めて、お話したいと思います。
あなたの会社のファイブ・フォース、
どんな状況でしょうか?
思いもよらないところが、
急に競争相手になる、
もしそんなことが起こるとしたら、
考えられることはあるでしょうか?